IT訴訟解説:開発技術の変更が争点となった裁判「ReactJSで作るはずだったのに、Laravelで作ったので訴えます」
保守まで考えるなら、やはり
判決はどうだったろうか。 --- 東京地方裁判所 令和3年9月30日判決より(つづき) 本件契約の当初において、ReactJSを使用することを前提に開発の協議がされ、6月時点においてもその趣旨を確認する契約書が交わされていることに加えて、プログラミング言語を無断で変更するとその後の保守に支障を来すことが容易に想定されることに照らすと、ベンダーにおいて、ユーザー企業の明示の同意を得るなどの特段の事情がない限り、本件契約の履行に当たっては、ReactJSを使用すべき義務を負っていたというべきである。 --- 判決ではユーザー企業の訴えた通り、言語の変更について合意を得なかったことがベンダーの非であると認定された。 本件の場合、「ReactJSを使用する」という協議の趣旨を確認する契約書が事前に交わされていたからそれに従ったまで、という意見もある。しかし判決文では、単に契約があったということ以外に以下も述べられている。 ・ReactJSの使用を前提にした協議が行われている ・プログラミング言語を無断で変更すると、その後の保守に支障を来す可能性がある 単に「契約書で言語について述べられている」だけであれば、これらの記述はなかったと思われる。逆にいえば、ベンダーは開発言語を勝手に変更できないことになる。特に保守ついては、ほぼ全てのシステム開発が当てはまるものであり、開発言語に関する合意はシステム開発における必須事項とも読める。
言語と言えばCOBOL、Javaといっていられたのは昔の話
冒頭で申し上げた通り、私は開発言語についてわざわざユーザー企業の合意を取り付けて決定するようなことは、かつてなかった。「COBOL」「Visual Basic」「Java」「PHP」などの言語を使って開発してきたが、それらは、そのときのデファクトスタンダード(事実上の標準)と呼べる言語ばかりで、わざわざ合意を得る必要もなかったというのが正直なところである。 ユーザー企業は利用言語の察しは大体ついていただろうし、言語が何であれ、機能と性能が要件を満たせばそれでいいとの考えもあったろう。仮に保守性のことを気にしたとしても、上述の言語であれば技術者を探すのに困ることはなかろうと考えていたとも推察される。