どん底からの立ち直り方がわかる映画5選!
巨大な悲しみをゆっくりと癒す友情の力『再会の街で』
歯科医を営むアランは街の喧騒の中で、大学時代のルームメイトだったチャーリーを見つける。長らく再会の機会を逸していた二人だが、その間、チャーリーは飛行機に搭乗していた妻と娘たちを9.11テロで喪うという悲劇を経験し、心的影響によって外見や言動がすっかり別人のように変貌していた。次第に交流を深めていく過程で、アランはチャーリーの心に刻まれた癒えることのない巨大な悲しみを知り、なんとかここから抜け出せないものか頭を悩ませるのだがーーー。 コメディ俳優として広く知られるサンドラーが、笑顔を封印して臨んだヒューマンドラマ。あらすじだけを追うとシリアスな印象を受けるものの、9.11そのものは描かず、あくまでその後の友人関係に焦点をあてる語り口が観る者をじわじわと惹きつける。ユーモアとテンポ感に満ちた丁々発止のやりとりも心地よい。重要なのはチャーリーだけでなく、アランもまた日常生活で夫婦関係や仕事の悩みを抱えているところ。共にさりげなく支え合いながら並走する彼らの関係性がすこぶる胸を打つ名作である。
崖っぷちの天才シェフが気づいた大切なこととは? 『二ツ星の料理人』
天才肌の腕とカリスマ性を持ちながら人としては欠陥だらけ……そんなギャップのある役柄をブラッドリー・クーパーが絶妙に演じあげた一作である。主人公のアダムはかつてパリで活躍しながらも様々な問題を起こし、唐突に姿を消したシェフ。3年ぶりにロンドンで返り咲いてミシュランの三ツ星を獲得しようと情熱を燃やすものの、いくら最高のスタッフに囲まれても、彼の完璧主義が暴走して周囲にあたり散らし、厨房の雰囲気は荒んだものになっていきーーー。 一人でできることだけが才能ではない。むしろ彼に欠けているのは、厨房のトップとして細部へ目を配り、仲間の仕事ぶりや可能性を信頼してまとめ上げていくことだ。心の底に覆い隠された己の“自信のなさ”ゆえに失敗を繰り返してきたアダムが、この天から与えられた最後のチャンスにて、大切なことに気づいていく過程が味わい深い。華美さを排した小規模な作品ではあるものの、このサイズ感こそが主人公の再出発の物語としてまさに最適に思える。