愛される建築とは何ですか? 大西麻貴+百田有希に聞きました。
公共建築からヴェネチアビエンナーレのキュレーションまで、幅広い活躍を見せるo+hの展示が始まりました。 【フォトギャラリーを見る】 詩人のT・S・エリオットは詩の概念を、「今までに書かれたあらゆる詩の生きた全体」と言った。その言葉を展覧会名に引用した建築家の大西麻貴と百田有希もまた、建築を考えるときに建築そのものを含む「生きた全体」を考えたいという。たとえば山形県の児童遊戯施設〈シェルターインクルーシブプレイス コパル〉は、車椅子を含むすべての人の動線であるスロープが子どもたちの遊び場にもなる空間が広がる。誰もが自分の居場所を見つけることができるよう「生きた全体」を考え、建築を通した社会の理想形を示そうと二人は試みる。
展覧会を「旅のようにつくろうと考えました」と大西は言う。3階の展示は彼らが考え続けているテーマ、生き物のような建築、道としての建築、私たちの時代の理想郷、なにを一つとして捉えるかという4つの大きなコンセプトを伝えるもの。大小問わず「内側の世界と外側の世界をつなぐ役割を担う建築に興味を持ち続けています。小さな居場所から大きな環境にまでつながる建築を実現したい」と大西。建築そのものは単体であっても「その建築を通して、街のあり方や人々の暮らし方が見えるにはどうしたらいいのかをずっと考えています」と百田が言葉をつなぐ。
3階から、中庭、小屋、階段を経て、トンネルを抜けると彼らの頭のなかを覗くような展示空間が広がる。冒頭のエリオットをはじめ、二人に影響を与えたさまざまな要素とともに具体的な模型や抽象化された模型などが混在。小さな部分が大きな構成へとつながる展示はまさに彼らの建築が目指すものと変わらない。部分が全体をなし、全体が部分をなす。百田はミクロとマクロの視点移動を描いたチャールズ&レイ・イームズの映像作品『パワーズ・オブ・テン』に影響を受けたとも話す。大西と百田の考える「生きた全体」は人の感性を刺激する。そして「愛される建築」となっていくのだ。
o+h展『⽣きた全体──A Living Whole』
書籍『愛される建築を目指して』も同時に刊行。~2024年11月24日。〈TOTOギャラリー・間〉東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F。11時~18時。月曜休。無料。
photo_Kenya Abe text_Yoshinao Yamada