妹島和世が語る“時”への思いとは? 庭園でアート、白昼夢のような一日を動画で追体験。
一本の木の足元に何気なく置かれたベンチ。雨上がりだからか大きな水たまりが出来ていて、青空と生い茂る緑の葉を映し込んでいる……と思いきや、水面と思っていたものは鏡面。「現在」のテーマを託された現代アートチームの目[mé]による《Elemental Detection》だ。 「”今”って、とても掴みとりにくいですよね」と話すのは、ディレクターの南川憲二。 「今、と思ったときにはもう過去。つかめそうでつかめない、そんな作品になればと思いました」。アーティストの荒神明香も話す。「たとえば山の景色は、遠くから見ているととてもきれいで、でも近づくにつれて森になり、林になり、一本の木になり、最後には葉っぱの一枚になって全体がわからなくなってしまう。美しいあの景色を景色のままに近づいたり、一歩踏み込んだりできないか。そう考えてつくった作品です」。
「前日の展示中に雨が降って来たんです。水彩紙を使った作品なので、どうなることかとかなり心配しました。ところが雨が上がり、紙が乾いたら、雨の重みや風を受けて紙がうねったり、地面の起伏に沿ってゆるやかに歪んだりしたことで自然な風合が出て、光の当たり方も柔らかくなりました。庭園に持ってきて自然環境に晒されたことで作品が完成した気がします。作品に時を取り込めたようです」 「未来」をテーマにした《Warp_Folded Garden》の前でそう話すのは小牟田悠介。会場である西洋庭園の外周と同じ、193mの紙を山折り谷折りに折り込んだ作品だ。 「現在の連続の先に未来がある。いま目の前にある、この庭園での素敵な体験の連続を知覚できるようなものを作りたいと思いました。自分がいる空間の長さや広さって、普段は具体的に知覚することはあまりありませんよね。ところがこうして“紙を折る”という誰でもできる作業で、この庭を巡る長さをたぐり寄せ、体感できる形になる。そうやって手触りをもって知覚することで、現在の向こう側へワープできる。そんなことを表せたらなと思っています」