妹島和世が語る“時”への思いとは? 庭園でアート、白昼夢のような一日を動画で追体験。
イベントの核となったのは、妹島の監修による直径、高さ3mのスチールテント。立ち上がった姿が巨大なアサガオや蓮の葉を思わせるそのテントは、自然の緑を背景に鮮やかに映える黄色と、ロレックスのブランドカラーでもある緑。これが有機的につながった“花畑”のような場所が、人が集まるきっかけをつくる。さらに目を見張ったのは、庭園内に配されたこちらも一日限りのインスタレーションだ。名和晃平、目[mé]、小牟田悠介という面々がこの日のための作品を寄せた。 「一日で終わるのがもったいないくらいの素晴らしい作品が揃いました。3組のアーティストには、“時”から、過去・現在・未来をそれぞれ意識していただいています」(妹島和世)
妹島のそんな言葉の通り、「こんな贅沢な機会が一日だけだなんて」という思いは、“お花のテント”からピアノの音が鳴り響き始めてさらに増幅されていく。テントでは、一日がかりで原摩利彦によるライブ・インスタレーションやアーティストらによるシンポジウムが行われたのだ。 奏でられる音の響きも、周囲の道路から聞こえてくる音によって変わり、集まる人々の顔ぶれや人々が集まる形も回によって変わる。過ぎていく時をいろんな形で体感する、そんなイベントともいえる。 「たまたまいらした方が、ふと惹きつけられてアートを鑑賞したり、シンポジウムを聞いていったり。いろんな形で参加することで、この場所、時間を作っていく。アーティストの皆さんの力をお借りしてひとつの場、この一日が出来上がっていくといいなと思います」(妹島和世)
一日限りのイベントで欠かせない役割を担った、3組の現代アーティストによる作品は、いずれもユニークな視点で”時”を感じさせるものだ。緑の芝生を見下ろすようにすくっと立ち上がる純白の孔雀は、「過去」をテーマにした名和晃平の《Peacock and Ether》だ。 孔雀は、実はかつて朝香宮邸の庭でも飼われていたのだそう。「古くから生命や精神の不滅を象徴してきたように孔雀はとても象徴的な鳥。今という不確かな時代を、凛とした姿で見ている孔雀の姿をあらわすことに集中し、少し見上げるような位置に置きました」と名和。止まり木の代わりに、水やエネルギーの循環をテーマとする 《Ether》を組み合わせている。