“タイパ”重視、顔文字チャットにWスクールも…通信制高校を選ぶ生徒たち
オンライン上の付き合いでは、教師と生徒との関係が希薄になりそうにも思えるが、深田さんはむしろ通信制は全日制よりも深く関係を築ける環境だと感じている。対面でのコミュニケーションが少ない分、頻繁に連絡を取っているためだ。 「入学式や卒業式などの行事のとき、手伝いを呼びかけると積極的に参加してくれる生徒さんも多いです。通信制とはいえ、学校に対する所属意識を持ちつつ、自分が過ごす拠点は自由に選びたいんだなと感じています」 オンラインとリアルの通学を組み合わせて学ぶ生徒もいる。同校3年の綱木映法さん(東京都在住)は今年3月、「死刑廃止論」をテーマに校内の発表会で研究の成果を披露した。肯定派、否定派の意見や各国の実態を分かりやすくまとめ、死刑制度について深く考える内容だった。研究中は、ZoomやSlackなどを介して教員と頻繁にやりとりをし、効果的なプレゼン資料の作り方や発表時の話し方についてアドバイスをもらえたと綱木さんは言う。
「どこを深掘りすればいいのか、きちんと出典を付けるべきだ、などアドバイスをもらいました。Slackだと気軽に意見を聞けるのがいいですね。本番前にZoomでプレゼンを先生に見てもらい、改善点も教えてもらいました」 こうしてオンラインをうまく使いながらも、綱木さんは週5日、同校のキャンパスにリアルに通っている。キャンパスの教室で対面授業を受け、自習スペースなどでパソコンを開き、オンライン授業を受けているのだ。 「生活リズムを整えるためです。家にいると怠けてしまうので、他に勉強している人がいる環境のほうが自分にはいいだろうと考えました」 オンラインとリアルのいいとこ取りということだろう。
「ネットの高校」をスローガンに、コロナ以前からオンラインツールの活用を進めてきた角川ドワンゴ学園N高校長の奥平博一さんは「オンラインをゼロにするのはもったいない」と強調する。 「全日制高校の中には『元に戻ってよかったね』と完全に対面授業に戻してしまうところも少なくありません。オンラインとリアル教育の黄金比を見つけ出すことができれば、もっと豊かな学びができるのにと思います」 教育はリアルでなければならない。そんな固定観念を打ち崩したいという。 「教室に来て座ることより、学ぶ内容が問われるべきです。オンラインで勉強することでリアルの世界が広がりを見せる。今は学校という壁に囲まれた中だけで学ぶ時代ではない。この部分がなかなか理解されませんが、N高、S高生の活躍を通じ、理解される日もそう遠くないと信じています」