“タイパ”重視、顔文字チャットにWスクールも…通信制高校を選ぶ生徒たち
前出の宇田さんの将来の夢はイラストレーターだ。宇田さんは週3回、午前中に「オンライン通学コース」の授業を受け、午後は高卒資格取得に必要な科目を学習し、残りの時間のほとんどを絵の練習に費やしている。 「Twitterに自分の作品を投稿しているのですが、仕事の依頼も来ますよ。最近は気分転換にたまに公園やショッピングモールに行っています。出かけるのは平日の昼間なので、店がすいていていいですね」 時間を捻出しやすいという強みから、通信制高校で学びながら別の専門学校に通う生徒もいる。 ID学園高等学校1年の宮崎愛夏さん(埼玉県在住)は、今年4月から美容学校とのダブルスクール生活をスタートさせた。将来の夢は、結婚式場で花嫁のヘアセットやメイクを行うブライダルヘアメイクアーティストになること。もちろん高卒資格も取りたかった。
「専門学校に通うとなると、全日制の高校には行けない。自宅で安心して学習できる体制が整っている通信制高校のほうが、自分らしい生活が送れると考えました」 ID学園高校にはキャンパスに通うコースもあるが、宮崎さんが選んだのは、ビデオ会議ツールのZoomで授業を受けながら、チャットツールのSlackで教員に質問したり、レポートの進捗状況を確認したりできるオンライン学習コースだ。 「なるべくリアルタイムでオンライン授業を受けるつもりですが、美容学校の通学日と重なる場合は帰宅した後に、録画された授業動画を見て勉強します。授業の録画データを何度でも見ることができるので便利です」
はっきりとした目的意識と“タイパ”
ID学園高校企画部部長の深田彩さんは、最近、目的意識をはっきり持つ生徒が増えてきたという。 「若い世代がよく使う言葉に『タイパ(タイムパフォーマンス=費やした時間に対する効果の程度)』がありますが、やりたいことをやるために自分の時間の使い方をしっかり考えている生徒さんは多いですね。空手の練習時間を増やすためにこの授業は受けないようにするとか、数学が好きだから1年生だけど数学Ⅱを受けたいといった要望もあります」