“タイパ”重視、顔文字チャットにWスクールも…通信制高校を選ぶ生徒たち
そうした生徒側の気づきに対し、教育を提供する教職員側、学校側も教え方について改善を重ねている。例えば、教職員はどうすれば生徒を授業に集中させられるかという課題。この点について、「オンライン授業の教職員は役者でなければならない」と沖田さんは説明する。 「オンラインだと画面しか見えないので、リアルより感情や感覚が伝わりにくい。だから、教職員はオンラインで授業をする際には、通常以上に表情を豊かにしたり、身ぶり手ぶりを交えたりするなど、喜怒哀楽を最大限伝えるようにする。工夫が必要なんです。テキスト部分も同様で、チャットもスタンプやフランクな表現を多用することで、生徒に安心感を与えたり、モチベーションを上げることを意識しています」 コロナ禍の初期は教師も生徒もオンライン授業に慣れていなかった。だが、全日制の学校がノウハウを試行錯誤している間に、オンラインの活用を先んじて進めていた通信制では、より生徒を引きつける取り組みにかじを切っていたということだ。
「時間の余裕」で見つけた将来の目標
オンライン授業のメリットの一つは、通学時間が必要ない分、時間に余裕が生まれる点だ。前出のみとさんは、この時間の余裕のおかげで将来の目標が定まったという。 「すき間時間に、よく海に出かけました。そのうち海に関わる勉強がしたいと思うようになったんです。将来は船を生かした観光や物流について研究したい。そのために大学に進学するつもりです」 みとさんはもともと、中高一貫校に通っていた。だが中学時代のコロナによる休校期間中に体調を崩し、対面授業が再開してもなかなか登校できず、勉強についていけなくなった。そのとき、心配した親が見つけたのがS高だった。通信制高校であれば、自分で時間をやりくりしやすく、のびのび過ごせる。S高に入学後は、中高一貫校時代より自由時間が格段に増え、高1という早い段階で明確な目標を見つけられた。 「何のために大学に行くのか。以前は、ランクの高い大学へと考えていました。でも、同じ科目、同じ内容の勉強をして、競争をしているだけでは自分のやりたいことはなかなか見つからないと思います」