“タイパ”重視、顔文字チャットにWスクールも…通信制高校を選ぶ生徒たち
「オンラインが合う」コロナ禍での気づき
学校におけるコロナ禍の始まりは、2020年2月末、当時の安倍晋三首相が要請した小中高校などへの全国一斉臨時休校にさかのぼる。当初は3月2日から春休みに入るまでという話だったが、4月7日に緊急事態宣言が発出され、休校期間はさらに延びることになった。 多くの学校で数カ月に及んだ長い休校期間中に、勉強への姿勢が変わった子たちがいる。 「ちょうど中2のときでした。コロナで休校となって、自分で計画を立てて勉強する習慣ができました。学校で先生からあれをやりなさい、これをやりなさいと指示されるより、オンライン授業と自宅学習のほうが自分には合っていると気づいたんです。実際、中3では成績も上がった。それで高校は通信制を選びました」 こう語るのは、角川ドワンゴ学園S高2年の宇田乃々果さん(神奈川県在住)だ。 「『グループトーク』の時間には4、5人の同級生とオンラインで討論するのですが、与えられるテーマが面白くて、毎回盛り上がります。『推し活』がテーマのときは各人の『推し』を紹介し合って、すごく楽しかったです」 宇田さんも冒頭のみとさんも、コロナ禍の2021年4月にS高、及びその姉妹校であるN高に開設された「オンライン通学コース」の生徒だ。一般的に通信制高校は、生徒は自主的に勉強を進め、レポートに対する添削指導、所定の会場で対面授業(スクーリング=面接指導)、そしてテストを受け、74単位を取得すれば高卒資格を得られる。これを通信制の基本メニューとすれば、同コースは、オプションメニューだ。
特長としては、少人数制のグループワーク(ディスカッションなど)が積極的に採り入れられ、メンターと呼ばれる教育スタッフが個々の目標に対してアドバイスをするコーチング体制などがある。動画視聴のような一方的な形式より双方向性が重視され、「個別最適な学び」の実現に向けて個人へのサポートが強化された指導体制だ。 角川ドワンゴ学園で通学コース運営部部長を務める沖田翔吾さんによれば、開設当初は「コロナで人と接触するのが怖いから」という感染を避ける理由で同コースを選ぶ人が多かったという。だが、昨年から今年にかけて、志望動機に変化が見られる。 「中学時代にオンライン授業を経験し、その学習経験を踏まえて『自分はオンラインのほうが向いている』と入ってきた生徒たちが増えてきたんです」 通学にかかる物理的な移動時間を趣味や習い事に費やせる、勉強のペースを自分でコントロールできるなど、中学時代にオンラインでの学びのメリットに気づいた生徒たちが一定数いるのだという。