6館中4館も…市立図書館の閉鎖是非 住民投票へ署名提出 東京・清瀬
東京都清瀬市が現在六つある市立図書館のうち4館を閉館すると決めたことに反対の声が上がっている。市民団体「住民投票で夢のある図書館を創るきよせの会」が、閉館の是非を問う住民投票を目指して8218筆の署名を集め、今月、市選挙管理委員会に提出した。市が図書館サービスを見直す案への意見募集(パブリックコメント)を実施した際、閉館の方針を明示しなかったことに問題があったと主張している。【鮎川耕史】 清瀬市は現在、「中央」「駅前」「竹丘」「野塩」「下宿」の五つの図書館と、元町こども図書館の計6館を運営している。計画によると、竹丘、野塩、下宿、元町こどもの4館を今年度末に閉館する。中央図書館は今年度末に閉館後、近くに建設中の複合施設に「南部図書館」として新設される。これにより市立図書館は「駅前」と「南部」の2館となる。 市は昨年、有識者らで構成する会議を踏まえて「清瀬市立図書館サービス基本方針」の素案をまとめ、公表した。素案への意見を市民から募集するパブリックコメントを今年1月に実施したが、意見提出は1件もなかった。市は3月の定例議会に4館を閉館する条例案を提出し、賛成多数で可決された。 しかし、素案には4館を閉館することが明記されておらず、「現在の6館の体制を見直し、市民の期待に応えた図書館を目指す」と記述されていた。市民団体は「閉館の方針が周知されていなかったので、パブリックコメントに意見を出すことができなかった」と反発。図書館存廃の是非を問う住民投票の実施を目指している。 署名活動は11月10日~今月7日に行い、11日、市選管に8218筆の署名簿を提出した。住民投票の請求には有権者の50分の1に当たる1263筆以上の署名が必要。市選管の審査や縦覧期間を経て有効性が確認されれば住民投票を実施する条例の制定を市長に請求する。請求を受けた市長は議会に諮り、可決されれば住民投票が実現する。 市の図書館担当者は取材に、素案に4館の閉館を明示しなかった理由を「議決の前だったので表せなかった」としている。 ◇宅配サービスは「代わりにならない」 「8218筆の向こうには、署名簿が届かなかったもっと多くの人がいる。住民投票で市民の声を聞いてほしい」。清瀬市内で20日に開かれた署名活動の報告集会で、「住民投票で夢のある図書館を創るきよせの会」の共同代表・関根美保子さんはそう語った。 駅前や商店街などで展開した署名活動の期間中、「どこに行けば署名できますか」との問い合わせが多数届いた。戸別訪問した市民から感謝の言葉が寄せられることもあり、関心の高さを実感したという。署名集めに協力する「受任者」は360人に上った。 市の「まちづくり基本条例」は、施策への市民の参画を推進するため、まちづくりの企画や実施の段階で内容をわかりやすく市民に説明することや、広報活動に努めることをうたっている。市民団体は、図書館サービスの基本方針を決める際にこの条例に沿った情報提供が十分でなかったと主張し、「4館の閉館に市民の合意が得られているとは言えない」と訴えている。 図書館を減らす理由として市が挙げるのは近年の利用状況だ。「年に1回でも本を借りる市民は13%」「2022年度の貸し出し延べ点数は10年前の約8割」。こうしたデータをもとに、図書館の利用は減少傾向にあるとしている。 また、市は来年度からインターネットなどで本の貸し出しを受け付ける無料の宅配サービスを始める。自宅への配送や読んだ本の回収を宅配業者に委託する取り組みで、「図書館に行きにくい人のニーズに応えられる」と強調する。 一方、宅配サービスは図書館の代わりにはならないとの見方もある。「棚にあるたくさんの本の中から好きな本を選べる」「思いもよらない本との出会いがある」。図書館の魅力について、市民団体のアンケートにはそんな声が寄せられている。