J2新潟社長の引責辞任で問われる棚上げ状態のJ1仙台責任問題
所属していた外国籍選手が道路交通法違反(酒気帯び運転)で検挙され、書類送検される不祥事を起こした、J2のアルビレックス新潟の是永大輔・代表取締役社長(43)が6日付で辞任した。 同日に開催された臨時取締役会で、是永氏が申し出ていた辞任が受理された。是永氏は今月17日に代表取締役から取締役に異動し、年内いっぱいで取締役も退任する。後任には元Jリーグ専務理事で、新潟の前社長でもある中野幸夫・取締役常勤顧問(65)が復帰することも決まった。 新潟ではブラジル国籍のFWファビオが、9月17日に酒気帯び運転で新潟県警に検挙された。直前まで同乗していたスペイン国籍のFWペドロ・マンジーとともに、10月16日に書類送検されたことを受けて新潟は同19日に2人の契約を解除した。その後に前者は略式起訴され、後者は不起訴処分になっている。 是永前社長は2人の契約解除後に新潟市内で記者会見し、管理監督責任として自らに年内いっぱいの100%減俸処分を、玉乃淳ゼネラルマネージャー(GM)兼強化部長にはけん責処分を科すことを発表した。さらに同日に開催されていた、臨時取締役会におけるやり取りをこう明かしている。 「私と玉乃の辞任および退任に関しては、特に話はありませんでした。ただし、私たちの責任はやはり大きい、という話はみなさんがおっしゃっていたと思います。今回の対策としてコンプライアンス対策室、あるいは委員会といったものを設けさせていただいております」 クラブとして再発防止に取り組んでいく方針を示してから、わずか2週間あまりが経過した時点での辞任となった。もっとも、6日に新潟市内で記者会見を開いた中野社長は、今月1日の段階ですでに是永前社長本人から辞意を確認したと明かしている。短い間に何が起こっていたのか。
Jリーグの村井満チェアマンは先月20日の臨時実行委員会後のメディアブリーフィングで、Jリーグ規約に抵触する可能性があるとして、新潟にヒアリング調査を実施すると明らかにしている。 ファビオが摘発されたその日に、是永前社長と玉乃GMは警察に出向いて事案を把握している。しかし、是永前社長がJリーグへ報告したのは約1ヶ月後の10月14日。その間に行われた明治安田生命J2リーグ戦で、ファビオは4度の先発を含めて6試合連続で出場していた。 事態が大きく動いたのは10月12日。Jリーグが設けているコンプライアンス窓口に、第三者から事案を告発する通報が入った。Jリーグから問い合わせのメールを受けた玉乃GMは、翌13日に選手名を伏せた上で事案のみを報告。14日になって是永前社長が電話ですべてを報告している。 正式報告までに不自然なタイムラグが生じた理由として、是永前社長はファビオが現行犯逮捕されずに任意捜査となっていたことなどをあげていた。それでも、任意捜査の対象となった選手が公式戦に出場し続けた点に、村井チェアマンは「過去のケースを見る限り例がない。自重するべきだった」と不快感を示すとともに、新潟が事実を隠蔽していたのではないか、という問いに対してこう答えている。 「隠蔽の事実があったかどうかを、ヒアリングでこれから確認します」 Jリーグは6日になって、新潟に罰金300万円とけん責処分の懲罰を科すと発表している。飲酒運転に対して日本と異なる認識をもつ外国籍選手に適切な指導や教育を講じなかったことと、ファビオが検挙された事実を是永前社長、玉乃GM、スペイン国籍のアルベルト監督の三者による共有にとどめたことを問題視。特に後者に関しては、ファビオを出場させたことを含めて厳しく指摘している。 「Jリーグに対して直ちに報告せず、この間、Jリーグによる是正の機会のないまま、独自の判断により同選手をリーグ戦6試合に出場させ、Jリーグの信用を大きく損なうこととなった」