「生産せずに売り上げを作る」 エレン・マッカーサー財団の新たな構想
循環型経済を実現するためのファーストステップは実証済み
ファッション産業で循環型経済を実現するには、次の3つのドライバーが重要だとEMFは提唱している。
1.プロダクトデザイン 2.循環型のビジネスモデル 3.インフラストラクチャー
ファーストステップのプロダクトデザイン自体を循環型へ移行することに関しては、19年に開始した「ジーンズ・リデザイン・プロジェクト」で実証済みである。21~23年に同プロジェクトにアパレルメーカーや小売り、テキスタイルメーカー、織物工場など25ヵ国100の企業が参加。EMFがさまざまな業界の80名以上の専門家やアカデミア、NGOからの情報を得てガイドラインを作成した。それを参考にし、150万着の循環型のジーンズが産まれている。これは21年時点で参加企業が生産していた循環型ジーンズの3倍以上の数に相当する。「ジーンズ・リデザイン・プロジェクト」のガイドラインは主に3つのポイントに焦点を当てている。
1.着用回数が増えるようデザインする
着用回数を増やすためには物理的な耐久性と情緒的な愛情が必要になる。例えば物理的耐久性に関しては、今までなかった業界共通の耐久性測定基準を設け、最低30回家庭で洗濯を行った際にも「新品同様」であるとした。そのために衣服の構造やパーツの補強などを見直す必要性を指摘。
2.再びジーンズとして生まれ変わるようデザインする
リサイクルしやすい生地の選択や作り方に取り組む。例えば繊維の総重量に対して綿や麻といったセルロース系繊維を98%以上含むことで、リサイクル後も高品質で高価値を保てることや回収分別の際に識別が容易に出来るように、RFIDやトレーサブルな繊維技術などを衣服に組み込むことを要求。
3.安全でリサイクル可能な原料を使用する
製品に使用する原料や加工のための化学物質に限らず、原料の生産工程や縫製施設内などで使用する清掃用品や機械の洗浄剤なども有害化学物質ゼロ(ZDHR)製造時制限物質リスト(MRSL)を適用し、人や生態系に安全が確認されているもののみを使用することなどを指摘。