「生産せずに売り上げを作る」 エレン・マッカーサー財団の新たな構想
今回のプロジェクトの直接的な目標ではないがEMFの試算では、上記4つの循環型モデルの市場シェアが2021年現在の3.5%から30年までに23%に達することで、ファッション産業全体のCO2排出量を最大16%削減することができるという。
循環型モデルの追及で儲かる先行事例が必要
プロジェクトのローンチ時に参加している8企業は、世界的に事業を展開するブランドもしくは小売りだ。H&M傘下の「コス(COS)」「アーケット(ARKET)」「ウィークデイ(WEEKDAY)」、カナダのアウトドアブランド「アークテリクス(ARC'TERYX)」、英国のファストファッション「プライマーク(PRIMARK)」、米国のウィメンズアパレル「リフォーメーション(REFORMATION)」、ドイツのファッションEC「ザランド(ZALANDO)」といった顔ぶれだ。
参加企業には循環型モデルに欠かせないパートナー企業が含まれない。例えば、リペアサービスを提供している企業やスレッドアップ(THREAD UP)などのリセールプラットフォームなどだ。この件に関してはデイビッド氏いわく「まずはある程度のスケールで試すことができ、業界へ影響を及ぼす可能性がある企業に焦点を絞った。参加企業がサプライチェーンで鍵となるプレーヤーと協業し、課題解決のための方法を模索することを期待する」とのことだった。
EMFが介入しサポートするのは循環型モデル自体を確立するためのマッチメイキングや技術の紹介ではなく、あくまでも事業の中で収益を出すためにどうスケールできるか、という点に焦点を当てているようだ。
日本は事例主義でありファーストペンギンになってリスクを取りたがらないとよく言われるが、その状況は他国でも同様だ。先月、グローバル・ファッション・サミット(Global Fashion Summit)で話された議題の中にもデータや先行事例なしでは、まとまった投資が必要な循環型モデルへの構造変革へ踏み切ることが難しいという声が挙がっていた。ゆえにこのプロジェクトでは、誰もが知る大企業が事業の変革を起こし顧客の行動変容をうながし循環型ビジネスの収益化を実現することで、先行事例として提示することが必須だと考えているようだ。