なぜ神戸のイニエスタは142日ぶりの復帰ゲームで勝利貢献できたのか?
過酷なリハビリが復帰へ結実した心境をこう明かしたイニエスタは、手術直後に長年の知己である医療スタッフがいるバルセロナを離れ、昨年末の段階で再来日している。愛してやまない家族に囲まれながら、ヴィッセルの一員として神戸の町で復帰を目指すためだった。 ファン・サポーターとも復帰へ向けた思いを共有したかったのだろう。イニエスタのインスタグラム(@andresiniesta8)には、松葉杖を外した瞬間の動画など、リハビリの経過を報告する投稿が数多く見られる。今シーズンの開幕を控えたJリーグ主催のイベントにリモート出演したときには、神戸のチームメイトたちへ向けてこんな檄を飛ばしている。 「勝利にこだわって、ファンと勝利の喜びを分かち合うような試合になることを何よりも願っています。ヴィッセルにはハングリー精神、勝利へのこだわりを持って試合に挑んでほしい」 シーズン途中の指揮官交代に伴う混乱や、シーズン終盤に集中開催されたACLへ注力した事情もあって、昨シーズンのJ1リーグは6連敗とともに14位で終えていた。イニエスタ自身も「モチベーションを保つのが難しかった」と偽らざる胸中を明かしていた。 迎えた今シーズンも序盤戦でイニエスタを欠き、新型コロナウイルス感染の関係で新外国人も入国できない状況下で厳しい戦いを強いられると予想された。しかし、4試合ぶりに勝利した広島戦を終えた時点で、6勝5分け1敗の勝ち点23で5位につけている。 開幕以降の神戸をけん引したのは、ACLを経験してたくましく成長したセンターバックの菊池流帆であり、右サイドバックとして新境地を開拓した山川哲史であり、東京五輪世代のMF郷家友太であり、3月シリーズで日本代表に初選出されたGK前川黛也だった。 広島戦ではイニエスタと同じ2018年夏に当時J2のFC岐阜から加入し、堂々のエースへと成長した古橋亨梧が前半11分、25分と連続ゴール。自慢のスピードを生かして縦へ抜け出し、通算9ゴールとして得点ランクの首位に並んだ26歳の韋駄天FWは言う。 「後半は広島に押されていたのでなかなか難しい展開でしたけど、それでも前半だけで3点のリードを奪っていたこともあって、アンドレスが復帰しやすかったのかなと思います」 ベルギー代表としてワールドカップ予選を戦い、再来日後の自主待機期間などの関係で戦列を離れていたDFトーマス・フェルマーレンが7試合ぶりに復帰。新加入の元U-20ブラジル代表FWリンコンも、デビューした前節の鹿島アントラーズ戦の倍以上となる25分間のプレーのなかで、ポストプレーや意外性に富んだ個人技などで大器の片鱗を見せつけた。 開幕以降の戦いで神戸を支えてきた中堅や若手が頼れる外国籍選手たちが次々と加わり、ついにはキャプテンを託す精神的支柱にしてレジェンドのイニエスタも復帰した。