なぜ神戸のイニエスタは142日ぶりの復帰ゲームで勝利貢献できたのか?
万感の思いを募らせながら、ホームのノエビアスタジアム神戸のピッチに立った。右足の大けがで長期離脱を強いられていたヴィッセル神戸の至宝、MFアンドレス・イニエスタ(36)が142日ぶりに、日本国内の試合に限れば164日ぶりに戦列復帰を果たした。 サンフレッチェ広島に3-0で快勝した1日の明治安田生命J1リーグ第12節。待望の瞬間は後半30分に訪れた。MF井上潮音に代って投入されたイニエスタが、それまでMF山口蛍に託されていたキャプテンマークを左腕に巻いてトップ下の位置に入った。 「本当に幸せな気持ちだ。チームメイトたちとともに、またピッチでプレーできたことが何よりも嬉しい。ここまで長い間、厳しいリハビリを積んできた努力がようやく実った。さらに素晴らしい形で勝ち点3を取ることができて、完璧な一日になりました」 まさかのアクシデントに見舞われたのは昨年12月7日。中東カタールで集中開催されていた上海上港(中国)とのACL決勝トーナメント1回戦だった。ロングシュートを放った際に右足のつけ根を痛めたイニエスタは、後半23分に途中交代を余儀なくされた。 中2日で臨んだ水原三星(韓国)との準々決勝。ベンチスタートとなったイニエスタは延長後半8分から投入され、1-1のまま突入したPK戦で1番手として登場。ゴール左隅へ確実にPKを決めた直後に再び右足のつけ根を押さえ、苦悶の表情を浮かべてかがみ込んだ。 水原三星との死闘を制したが、代償は大きかった。蔚山現代(韓国)との準決勝でイニエスタはリザーブからも外れ、試合も1-2で敗れた。けがは右大腿直筋近位部腱断裂と診断され、母国スペインに渡って緊急手術を受けた。全治約4ヵ月の重症だった。 ただ、イニエスタ自身は右足の状態の酷さをわかっていた。その上で覚悟を決めて、水原三星戦での途中出場を志願した。勝利こそが神戸の新しい歴史を作る。バルセロナに続く、サッカー人生で2つ目の所属チームへ注ぐ熱き思いが身体を突き動かしていた。 「長いけがということもあって、やはり(メンタル面における)浮き沈みというものはどうしてもあった。そうした難しい時期を、努力と練習を続けることで乗り越えてきた。長い(リハビリの)期間が実って、今日という日を迎えることができた」