【このニュースって何?】「103万円の壁」が問題に → 所得税って何?
日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんがヒントを教えます。
国民民主党が総選挙で訴えた重要政策
「103万円の壁」という言葉をよく聞くようになりました。10月27日投開票の総選挙で国民民主党が「103万円の壁をなくし、178万円に引き上げる」という政策を打ち出し、議席を大幅に増やしたことがきっかけです。 自民党と公明党の与党は過半数の議席をとれなかったことから、国会で国民民主党の協力を得ることが必要になっています。そのため、国民民主党の政策の中でもっとも有権者に響いたと思われる「103万円の壁をなくす」という政策が実現する流れになり、注目されているわけです。 そこでまず「103万円の壁」とは何かということを説明しようと思います。103万円が持つ意味は二つあります。ひとつは、年収がそれを超えると所得税を納めなければならなくなるというものです。 もうひとつは、それを超えると働き手の親(養っている人)が納める所得税額が増える場合があるというものです。親に養われている大学生などがアルバイトをしている場合、年収が103万円までなら扶養控除が適用されて親の所得を少なく計算することができるのですが、103万円を超えると扶養控除がなくなるため親が納める所得税が増えてしまうのです。 このように働く人にとって103万円を超えると税負担が生じ、働く人を養っている人にも税負担が生じる場合があるということになります。それを嫌って、年収を103万円以内に調整しようとするパートやアルバイトの人は多く、働く人の壁になっているという問題です。この壁が人手不足に拍車をかけている面があり、社会全体にとってもマイナスの影響が出ています。 国民民主党は、103万円が決まった1995年と今を比べると最低賃金が1.73倍になっているので、103万円の1.73倍の178万円まで壁を引き上げるべきだと主張しています。ものさしが最低賃金でいいのかといった議論もあり、178万円という水準が妥当かどうかはわかりませんが、「物価や賃金は上がっているのに30年も103万円のまま据え置かれているのはおかしい」という主張には説得力があります。