あの頃、俺たちはハングリーだった 『劇映画 孤独のグルメ』公開記念・松重豊×甲本ヒロト特別対談
ハングリーとは満たされた上での飢餓感
――確かに口ずさみたくなります。 松重: あの頃いつも飯に困っていた俺らが今、腹減ったって曲に乗せて、腹減ったって映画を観てもらって。やっぱり、腹減ったってすべての基本というか。 甲本: 人間は常に空腹と共に歩いているから。 松重: うん。さっき喰ったのに、何時間もすればまた腹が減ってる。 甲本: 飢餓感っていろいろあるやんか。ロックンロールでいうところのハングリーとか。で、そのハングリーは貧乏とは違う。貧乏な人はエレキギター買えんからな。エレキギターを持ってハングリーっていうのは、満たされた飢餓感なんよ。全部あるけど「足りんのよ」っていうのが本当のハングリーだし、普段感じる「腹減った」もハングリー。 松重: そういう飢餓感があるからこそ、ああでもないこうでもないって何とか工夫して、物を作り出して。やっぱり飢餓感って大事よな。それを改めてヒロトと共有できたことが、かけがえのない体験というか。 甲本: いやいや、まずあのドラマがええよ。そして、映画も最高。それだけです。
俺たち、豆タリアン!?
――せっかくこういう映画なので、おふたりの人生最高グルメもお伺いしたいです。 甲本: 僕、ある時期、自分が好きなものがわかった。豆だった。30歳ぐらいの時。 松重: わかる。俺も豆好きやもん。 甲本: わかるんか。豆はうめー。あの味が好き。 松重: 豆はいつまででも喰えるよね。 甲本: 喰える。そやから、ある時から枝豆も素茹でで、塩かけずにそのままいく。 松重: 俺はちょっと塩分は欲しい。だけど、シューマイとかグリンピースが乗ってるとどかす人がいるのは許せない。 甲本: 同じ、同じ。どかすんだったら、俺のにもう1個乗せろ。豆は丹波の黒豆も旨いし、信州のくらかけ豆も旨い。 松重: あんた詳しいな。 甲本: 豆タリアンやからね。ツアー行って豆買う時もある。あんたもそうだろ? ロケとかでいろんな所に行って、つい道の駅とか見るじゃろ? 松重: 見透かされてる。今回、この映画の宣伝で鹿児島行ったり、岩手行ったりしたけど、道の駅でいろんなものを買うから、物が溜まりまくって大渋滞してる。