「人が足りない」との声ばかり…建設業で若者が職人になりたがらない根本原因
賃貸住宅建設最大手の大東建託が7月27日に東京ビッグサイトで開催した技能競技大会「匠マイスター技能選手権」の会場で、同社の工事発注担当者から人手不足の実情を聞いた。 同大会には、関東地区の協力会社で技能の高い職人たち約50人が出場し、仮設で作った賃貸住宅のモックアップに断熱材を入れ、石膏ボードを張るなどの内装工事を行う大工と、配線とコンセントの設置などの電気工事を行う電工、水道の配管工事を行う設備工の3人がチームを組んで技能を競う。休み時間などに手あたり次第に参加者に新規職人の採用状況を尋ねて回ったが、「いまどき職人になろうなんて若者はいないよ」との声ばかりだった。
■建設業界が抱える最大の課題 建設業界が抱える最大の課題は「月給制」の実現であると筆者は考えている。そのことは約10年前の記事「職人軽視の日本人が、建設業をダメにする」でも書いた。 建設業界では、ゼネコンやハウスメーカーなどに正社員として雇用されている技術者は決まった給与が支払われる月給制である。しかし、その下請けで働く技能労働者は働いた仕事量に応じて給与が支払われる「日給月給制」が広く適用されてきた。
現在でも仕事量で賃金が決まる「手間請負」で仕事が発注されるケースは多い。大東建託から仕事を受託している設備工に聞くと「1戸仕上げると、いくらと手間賃が決められている」という。仕事の発注量が月ごとに変動すれば、それによって給与もアップダウンする。大東建託が工事の季節変動の平準化に乗り出したのは、発注者側の都合よりも技能労働者の稼働率アップと処遇改善を優先したからだろう。 全国建設労働組合総連合(全建総連)では、毎年、賃金調査を行っており、2023年調査では約10万人から回答を得た。「若手経営者を中心に月給制を導入する企業は増えてきているが、まだ全体の4割。2009年のリーマンショックで建設需要が激減したときに36万~37万人に減った一人親方も、その後は増える傾向にあり、2023年には63万人に達している(技能者全体で304万人)」(長谷部康幸・賃金対策部長)。まだ全体の6割が日給月給制というのが実態だ。