「人が足りない」との声ばかり…建設業で若者が職人になりたがらない根本原因
公共工事の発注は、入札参加者が現れることを前提にこれまでは実施されてきた。しかし、大都市に比べて人口減少が進む地方では、建設労働者の数も激減しており、参加する建設事業者が現れない事態も出てきている。インフラ管理者としては、誰も手を上げないからといって、必要な維持・修繕工事を実施しないわけにはいかない。その対策を「国は考えているのか?」との問いかけである。 ■大阪万博や能登半島地震にも影響 民間工事でも施工能力不足は顕在化している。ちょうど1年前に掲載した「大阪万博『工事遅れ』背景に施工能力不足の深刻」(2023/09/07)では、関西4府県の建築着工床面積(住宅除く)が年間約700haであるところに、会場面積155haの大阪・関西万博の工事が発注された事実を指摘。人手不足でフル操業状態が続くなか相当な負荷がかかったことが海外パビリオンなどの工事遅れにつながったのは間違いない。
この記事では、地震などの大災害が発生したときに施工能力不足によって復旧・復興が進まないことにも警鐘を鳴らした。不幸にも、その4カ月後に能登半島地震が発生し、半島という地理的な条件もあって多くの被災建物は撤去されずに放置された状況が続いている。今年8月には初めて巨大地震注意が発表された南海トラフ地震では東日本大震災の約20倍となる約238万6000棟の建物被害(全壊)が想定されており、その対策も真剣に考える必要がある。
建設生産システムは、土木は主に機械化で、建築はプレハブ化によって生産効率の向上が図られてきた。しかし、敷地に合わせて用途ごとの建設構造物を構築するにはどうしても人手が必要となる。とくに建築の内装や設備などの工事はほぼ人手で行われており、躯体部分をいくらプレハブ化しても、それ以外の工事には技能労働者が欠かせない。 「いま、最も足りていないのは造作大工(内装工)だ。これまでは期末の3月、9月に工事が集中していたが、今年度からは工事量の平準化を本格的に進めている」