沖縄の伝統食はなぜ長寿の秘訣なのか、地中海食と並ぶ世界の双璧 本来はどんな料理?
沖縄食の起源と特徴的な食材
沖縄の長寿は、伝統的な食事と全般的なライフスタイルに関連があると考えられていると、米ニューヨークで活動する栄養士の宮下麻子氏は言う。「沖縄の人々は屋外で長い時間を過ごし、また一日を通して一つひとつの食品を少しずつ、どれもほどほどに摂取するのです」 地中海食やDASH食(高血圧を防ぐ食事方法)と比べると、沖縄の伝統的な食事は脂質(特に飽和脂肪酸)が最も少なく、また炭水化物が最も多い。 事実、沖縄食における主要栄養素の割合は、良質の炭水化物(サツマイモなどの根菜類、葉物野菜)が大部分を占めており、炭水化物85%に対し、タンパク質は9%、オメガ3脂肪酸を含む脂質は6%となっている。 伝統的な沖縄食の場合、主食となる炭水化物は、日本食のような米ではなく、抗酸化物質に富むサツマイモ(黄色っぽい種類だけでなく、紫色や白色のものもある)だ。「サツマイモは良質の炭水化物であり、血糖値を急激に上昇させることがありません」とウィルコックス氏は言う。 このほかの主要な食べものとしては、大量の大豆食品(大豆、豆腐、味噌汁など)、葉物野菜(ホウレンソウ、カラシナ、水菜、キャベツなど)、豆類、根菜類(ニンジン、タロイモ、ダイコンなど)、果菜類(カボチャ、ウリ、ゴーヤー)、キノコ類、多様な海藻類、魚、果物(ブドウ、バナナ、青パパイヤなど)、 少量の肉(特に豚肉)が挙げられる。 好んで飲まれているのはお茶(特にさんぴん茶と呼ばれるジャスミン茶)と酒、よく使われる調味料はウコン(ターメリック)、ショウガ、かつお節、醤油、ニンニクだ。 2017年2月7日付けで学術誌「Current Nutrient Reports」に掲載された論文によると、沖縄本島北部の大宜味村で最も頻繁に食べられているのは、豆腐と多様な海藻類だという。海藻は多くのミネラルを含んでおり、それが体内の電解質バランスを調整し、神経および脳の機能を保護すると、宮下氏は述べている。 「沖縄食が極めて健康的である理由は、健康的な食生活の基本テーマに忠実に沿っているからです。沖縄食は、植物を中心として、合理的かつバランスよく組み合わされたリアルフード(加工されていない食材で作られた「本物の食事」)なのです」と語るのは、米国生活習慣医学会の元会長デイビッド・カッツ氏だ。 「最適な栄養を取ることが、あらゆるものが正常に機能するのを助け、そのおかげで体の正常な機能が保たれます。良い燃料をタンクに入れれば、エンジンが最適に働き、老廃物を日々取り除くことにつながります」 もうひとつ、伝統的な沖縄食の注目すべき点として、食を薬として捉える考え方(医食同源)があると、ウィルコックス氏は言う。沖縄食では、ハーブやスパイスを含む植物が健康を目的として用いられることが少なくない。 たとえば、ジャスミン茶は自律神経系を調整して、リラックス効果をもたらすことが知られていると、宮下氏は言う。 また、2020年8月26日付けで「The Journal of Human Nutrition and Dietetics 」に掲載された論文では、抗酸化物質が豊富な「いしまき茶」(沖縄に生えているオオイタビの葉を煮出したもの)を3カ月間、定期的に飲んだ場合、血圧が下がり、脂質異常が改善されることが示された。 伝統的な沖縄食に使われないものとしては、加工食品、精白糖、大量の赤肉が挙げられる。また、乳製品も少ない。 「地中海食と共通しているのは、沖縄食が、慢性的な疾患を治すために考案されたものではないという点です」と、ニューヨーク市の栄養士で、米アルバート・アインシュタイン医科大学小児科の名誉准教授キース・アユーブ氏は言う。「沖縄食は、地元の人々の文化の一部として進化してきたのです」