給食用エプロンや体操着…強い香りで頭痛や吐き気が起きる「香害」とは? 専門家が解説
――柔軟剤による被害が増えているのはなぜでしょうか。 柔軟剤に反応する人が多いのは、長時間香りが続くようなしくみで作られているものが増えたためだと考えられています。マイクロカプセルという花粉よりも小さなカプセルの中に香りの成分が入っていて、紫外線や熱、摩擦などにより時間差で放出されるようにした技術です。香りを楽しむにはよいしくみですが、その香りを苦手と感じる人にはつらい状況です。成分が長く空気中に漂うことになるので、さらされる時間や量が増え、不調を感じる人が増えたのです。 ■香害は「過去の感情や記憶」が原因 ――香害はそもそも、なぜ起きるのですか? 嗅覚(きゅうかく)というのはとても原始的な機能で、脳の働きや感情、記憶と密接な関係があります。 人間の五感には視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚がありますが、唯一、嗅覚だけが脳の大脳辺縁系に直接伝達されます。大脳辺縁系は感情や本能をつかさどり、記憶にも深く関係する場所なので、香りは感情や記憶と結びつき、長期間保持されます。子どものころに嗅いだ香りを嗅いだら、何十年も経っているのに当時の情景をリアルに思い出した、ということがあるのはそのためです。 この香りと記憶の強い結びつきが、香害の引き金となっていることがあります。一度苦手だな、不快だなと感じた香りを嗅ぐことで不快な記憶を思い出す。それを何度も繰り返すと、身体が非常に強い反応を示すようになり、それが不調となって現れるというわけです。 ――つまり、香害は脳の問題ということですね。治すことはできるのでしょうか。 治療としては、悪い記憶をよい記憶に置き換えることが有効です。認知行動療法といいますが、“この香りは身体にいいんだ”とか、“匂いに敏感というのは嗅覚が優れているということなんだ”などというふうに、プラスのイメージとして脳が認識するようにマインドを変化させていくのです。しかし、この方法は時間がかかりますので、まずは、原因となる香りから遠ざかるということが一番の対処法になります。