【あの人の仕事場から学ぶインテリア / Case03】名作家具で彩られた凛とした空間
●名作家具で彩られた凛とした空間。|KIGENZEN 大長将之・相澤真諭子(クリエイティブディレクター)
クリエイターたちが、その創作哲学を表現する空間には、真似したいインテリアのアイデアが詰まっています。発売中の特集『仕事場とインテリア。』より、色使い、DIY、収納など、仕事場を形づくる独自の視点に迫ります。 【フォトギャラリーを見る】 全6回にわたる本企画の第3回は、ともにデザインの仕事に携わる夫婦が、時にともに、時にそれぞれに働く空間。そこには二人が出会った美が集積されていました。 仕事場のあり方を追求し、場を開くことを決意。 デザインやブランディングを手がける大長将之さん、そして長く務めた〈フリッツ・ハンセン〉の日本支社長から独立した相澤真諭子さん夫妻はそれぞれが別に事務所を持ちつつ、ともに働く場として〈キゲンゼン〉を構えた。現行やヴィンテージの家具とともに、美術書、古物、アート、デザインプロダクトが混在する場所だ。 〈キゲンゼン〉はアポイントメント制で誰をも迎える。空間コンセプトを考えるうちに、これまで収集してきた家具やオブジェなどが並び、古物商の資格も取得。この空間のための音楽も音楽家の青山翔太郎に制作してもらった。今後は展示やワインの試飲会などを開く予定だ。
「非常に内的な動機から始まり、当初は空間を充実させていくことが目的でした。しかし私たちの仕事にインスピレーションを与えてくれるものを設えるうちに、ここに人を招くことで、面白いことが生まれると考えたのです。そこで一般に公開する場としました。ですからここはギャラリー、ブックショップ、骨董屋、そしてアトリエとも言える空間。わざわざ予約をして訪れてもらうことになり、そこで言葉を交わし、精神的なお土産を持って帰っていただきたい」と大長さんは言う。 縄文時代から最新のデザインまで、人類のものづくりの長い歴史を踏まえて〈キゲンゼン〉、つまり紀元前と名づけた。同時に二人は自身が心地よく働けることが大前提にあるともいう。
「親しくさせていただいている家具コレクターの織田憲嗣先生から、美しいものや人の手がきちんと加えられているものは人の所作を要求するという言葉をいただきました。私たちはここにあるものによって美しい所作が促され、そして凛とした気持ちで仕事に向き合える。それが最も大切なことなのかもしれません」と、相澤さんは続ける。 美しい空間は仕事のあり方に作用する。まさにそれを体現した部屋が二人の仕事を作り出す。
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photo_Satoshi Nagare text_Yoshinao Yamada