いびきで“睡眠離婚”や避難所ストレス…身近な社会問題にどう向き合うか?
欧米では体育館など大勢が生活する避難所はなるべく早く撤収し、個別避難できるようなテントを設置したり、遠隔地へ避難させたりする。 榛沢氏が衝撃を受けたのが、2012年にイタリアの避難所を視察した時のことだ。家族ごとに冷房完備のテントが支給され、マットレスのあるベッドが設置されていた。 「テントの間は4、5メートル離れていたので、他の家庭のいびきは聞こえにくいと感じました」 イタリアには、災害対策を専門に行う市民保護庁がある。同庁が直轄する市民保護局が各州にあり、災害時の備蓄体制を整えている。約500万人の災害ボランティアとも連携しているため、迅速な避難所設営が可能だという。
一方、日本は避難所の運営は国ではなく、各市町村が行う。そのため、自治体によってばらつきがあるのが課題だ。榛沢氏は「人権を守る避難所づくりには、災害対策専門の省庁の設置と、国家レベルの備蓄、災害時のボランティア育成が欠かせない」と指摘している。 「いびきは不眠をもたらします。不眠は精神的、肉体的な疲労を蓄積して、高血圧の原因になり、脳梗塞、心筋梗塞などを誘発するリスクもある。雑魚寝の避難所では、いびきだけでなく、おならなどの生理現象にも気を使いますよね。被災者支援は個人の救済ではなく公共の福祉であるという認識を持って、避難所を改善する必要があります」 人間が生きていくうえで不可欠な睡眠。いびきは単なる生理現象とも捉えられがちだが、重大な健康被害につながる恐れがあるだけでなく、自分や周囲の人の生活の質にも影響を与える。そうしたリスクは、家庭というプライベートな空間だけでなく、避難所のようなパブリックな空間でも顕在化し得る「身近な社会問題」ともいえるだろう。適切な治療を受けることで、いびきが改善することもある。デリケートな問題ゆえに指摘しにくいかもしれないが、周囲の人と腹を割って話してみてはどうだろうか。
------------ 国分瑠衣子(こくぶん・るいこ) ジャーナリスト。北海道新聞、繊維業界紙を経てフリーランスに。経済、法律メディアなどで執筆中。主な取材テーマはカスタマーハラスメント問題。趣味はおいしい日本酒を探すこと ---- 本記事はYahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」、「#災害に備える」の一つです。地震や台風、火山の噴火などの自然災害は「いつ」「どこで」発生するかわかりません。Yahoo!ニュースでは、オリジナルコンテンツを通して、災害への理解を深め、安全確保のための知識や、備えておくための情報をお届けします。