お尻に火がついているから、やれることはなんでもやる 環境政策の先進地・米カリフォルニア州が食品ロス削減にも本気を出した
雨水だって無駄にしない
バークリー・リサイクルセンターでは、紙類や電化製品、電池、衣類、靴、瓶などが、カテゴリー別に35種類に分別されている。近隣の住民が車で資源ごみを持参し、自分で仕分けするスタイルだ。 めずらしいところでは使用済みの食用油や自動車用オイルなんて分別もある。持ち寄られた本やCDは、希望者がいれば自由に持ち帰れる。資源ごみスタンド脇ではフードドライブもおこなわれていた。 感心していると、案内してくれたマリオ・ゴンザレスさんが「雨水だって無駄にせず、ためて使うんだ」と教えてくれた。
州法「SB-1383」の成果
州リサイクル局によると、2023年には21.7万t(2億4200万食分)の余剰食品が生活困窮者に再分配された。また2024年10月時点で、州内の自治体の約8割が生ごみの分別回収をおこなっているという(州人口の何%がカバーされているのかは不明)。 できあがった堆肥を無料で配布しても消化しきれず、堆肥の山が増えていく一方の自治体もあるようだが、カリフォルニア州の農地面積は2420万エーカー(約979万ha)と広大だ。大量に生産されることになる堆肥を有機質肥料として施肥できれば簡単に解決できるはずだ。 しかし、農家に有機質肥料として安心して使ってもらうためには、成分、有効性、施肥する量や時期などについて客観的な評価が必要なはずだ。準備期間はあったはずなのに、生産される堆肥の使い道を検討せずに、いきなり食品ロス廃棄禁止に踏み込んだのだとすれば驚きだ。
ついに米国初の食品期限表示改革法が成立
2024年9月、カリフォルニア州議会は、米国ではじめてとなる食品期限表示改革法案「AB-660」を可決した。食品ロスの原因となってきた、まぎらわしい食品期限表示を簡素化・標準化するものだ。 カリフォルニア州では年間およそ600万tもの食品ロスが発生しているが、主な原因のひとつとされているのが食品期限表示の一貫性のなさだという。 米国の連邦法では乳児用の粉ミルク以外の食品には決まりがなく、食品メーカーごとに「fresh until」「enjoy by」「freeze by」「born on」など独自の期限を表示しているため、実際の店頭には50種類もの期限表示が存在している。 1029人を対象にした2016年の米国の消費者調査によると、84%は少なくとも時々期限の迫った食品を捨てており、3分の1以上の人が食品の期限表示は連邦政府によって規制されていると誤解していたという。 食品医薬品局(FDA)は期限表示が原因の食品ロスが全体の20%を占めると推定しており、カリフォルニアの場合、年間約120万tもの食品が、期限表示が原因で廃棄されていることになる。 2026年7月以降、カリフォルニア州で販売される食品の期限表示は、おいしさのめやすは「賞味期限(BEST if Used by)」、安全性を示す期限は「消費期限(USE by)」に統一され、同時に流通・小売業者が在庫管理に使い、消費者には関係のない「販売期限(Sell by)」は禁止される。 例外として、ワインや蒸留酒については、生産やボトル詰め、包装が行われた日付を表示してもよく、また乳児用加工乳、卵、殻付き低温殺菌卵、ビールやその他の麦芽飲料は、こうした期限表示ラベルの対象外となる。 カリフォルニア州は経済規模が非常に大きい(2017年時点でGDP約2兆7460億ドルは、世界5位に相当)ため、カリフォルニア州の基準で期限表示をするメーカーが増える波及効果が期待される。