お尻に火がついているから、やれることはなんでもやる 環境政策の先進地・米カリフォルニア州が食品ロス削減にも本気を出した
法制化で、どのような変化が見られたのか
シリコンバレーのフードバンク「セカンドハーベスト」を取材して驚いた。 訪問したのは平日だったが、30人を超えるボランティアが広々とした倉庫で食品の仕分けをおこなっていたのだ。そのうえ、まだほかに職員が300人もいるという(日本ではスタッフが10人以上いれば大きい部類)。
日本では、大型の冷蔵庫や冷凍庫を持っているフードバンクは限られるため、取り扱うのは賞味期限の長い加工食品に偏りがちだ。農業の盛んなカリフォルニア州では、寄付される食品の半分以上(セカンドハーベストでは60%以上)が生鮮食品ということも多い。この日は農家から寄付された規格外の洋梨が大量に届いていた。 シニア・マネジャーのジョアン・サンボーンさんによると、「SB-1383」施行前の2020年に4万t程度だった小売業者からの食品寄付が、施行後に約5万~6万tへと増加したそうだ。
食料支援を考えるときに日本が忘れがちなこと
フードリカバリーをおこなう「ローブス&フィッシュ・ファミリーキッチン」を訪問すると、ちょうどドライバーのコーネリオ・チャベスさんが回収してきた果物やパンなどの食品をおろす作業をしていた。 ここで10年以上働いているというチャベスさんは、「サンノゼのスープキッチン(炊き出し)で3人の子どもを連れた母親に会ったときのことが忘れられないんだ」と語っていた。 「子どもたちに食べさせるために、彼女は何日も食べていないと話してたよ。だれだってそうなる可能性がある。家族や友だちのような自分のたいせつな人にもね。そう気づいたからこの仕事をつづけているんだ」 =========================== 【筆者注】「フードバンク」が寄付された食品や食材をそのまま組織や個人に渡すのに対して、「フードリカバリー」は寄付された食品や食材で調理をし、あたたかい食事や冷凍弁当にして必要とする人に提供することをいう。 =========================== このフードリカバリーセンターでは、「SB-1383」効果で、現在は1日あたり約8千ポンド(3.6t)程度の食品寄付量が、2025年度に9千ポンド、2026年には1万ポンドと増加すると予測している。寄付量の増加に合わせて、現在1日あたり7500食程度の食事提供数を13000食まで増やせるようにキッチンを増設中だ。 印象的だったのは、一人暮らしの高齢者など、高齢の方や障害のある方も食事提供の対象に含まれていることだった。日本では子ども食堂の数が全国で9千以上に増えた一方、困窮した高齢者の支援は限られている。少子化と高齢化が同時に進んでいるのだから、高齢者への食の支援も必要なはずだ。