なぜFC東京スーパールーキーの松木玖生は待望のプロ初ゴールを決めることができたのか…見逃せないバックパスへ懸命な動き
開幕からインサイドハーフの先発を射止め続けるFC東京のスーパールーキー、松木玖生(19、青森山田高卒)が出場10試合目で待望のプロ初ゴールを決めた。 敵地・ベスト電器スタジアムで3日に行われた、アビスパ福岡との明治安田生命J1リーグ第11節の前半24分に、素早い出足から勢いのない相手のバックパスを奪取。対峙したキーパーの動きを見極めて、利き足と逆の右足でゴール左へ流し込んだ。 2024年のパリ五輪を目指すU-21日本代表に、いわゆる“飛び級”で名を連ねるホープの一撃で同点に追いついたFC東京だったが、その後に4連続失点をして1-5で完敗。6試合ぶりに喫した黒星に悔しさを露にした松木は、個人として「自分のなかでは、勢いに乗るゴールになると思う」と次節以降の大暴れを誓った。
無人のゴールへ転がした同点ゴール
待ち焦がれた瞬間は、川崎フロンターレとの開幕戦のキックオフから数えて775分目に訪れた。自身が放った通算7本目のシュートで、松木がゴールネットを揺らした。 1点のビハインドを背負った前半24分。福岡のキーパー、村上昌謙のゴールキックで再開され、中盤でのボールの奪い合いになった直後だった。 状況を落ち着かせようと、福岡の左サイドバック志知孝明が村上へのバックパスを選択する。しかし、後方へ下がりながらの体勢で、かつ利き足とは逆の右足で蹴ったからか、勢いなく転がっていったボールを、死角の位置にいた松木は見逃さなかった。 中盤での混戦でボールに絡み、そのまま今シーズン初めて先発で同時起用された前線のブラジルトリオ、ディエゴ・オリヴェイラ、レアンドロ、アダイウトンを追い抜いてすでに最前線の位置にいた背番号44が、一気に縦へ加速していった。 自身への絶妙のスルーパスの形になったバックパスを、足元に収めるまでの数秒間に松木が抱いた思いを、Jリーグの公式ホームページが伝えている。 「普通ならゴールキーパーに強いバックパスが行くと思うんですけど、ちょうどパスが緩かったので」 左足でのファーストタッチで右へ持ち出しながら、ペナルティーエリアぎりぎりまで前へ出てきた村上の動きをしっかりと見極める。村上の脳裏には松木が左利きだというデータも刻まれていたはずだ。その逆を突くようにさらに右前へボールを運んで村上をかわした松木は次の瞬間、右足のインサイドで優しくボールにタッチした。 対角線上をゆっくりと転がり、無人のゴールへ吸い込まれていった同点ゴールを見届けながら抱いた思いを、松木は19歳とは思えないほど冷静に振り返っている。 「最初ゴールキーパーを見たときは左に流し込もうと思ったけど、ちょっとシュートを打ちづらい距離だったので、かわして冷静に流し込もうとしてああいう形になりました」 相手のミスを突いたプロ初ゴールには、絶対に見逃せない動きがある。