クジラがレジ袋を好物のイカと間違えて食べている恐れ、大量誤飲の原因か、最新研究
獲物と似たエコーを返す
深海に生息するハクジラ類は、噴気孔の下にある発声唇を振動させて音を生じさせ、メロン体(額の脂肪組織)を通して音を発する。この音が暗闇の中で物体にぶつかって跳ね返ってきたものを、下顎の脂肪が捉えて内耳に導くことで、何百メートルも離れた獲物の位置を正確に特定することができる。 「最初に発するのはクリック音です」と説明するのは、米デューク大学の海洋哺乳類学の博士課程学生で、今回の論文の筆頭著者であるグレッグ・メリル氏だ。しかしクジラが狙いを定めると、「クリック音は非常に速くなり、最終的にはそれらが混ざり合ってブーンという音になる」という。 今回の研究で、メリル氏らは、ポリ袋や風船などのプラスチックごみを9種類集めた。これらは米ノースカロライナ州の海岸に打ち上げられるクジラの死体の胃の中からよく見つかるものだ。 研究チームは5月、研究船の下の海中にこれらのプラスチック製品を吊るし、ハクジラが狩りに使う周波数の音波を当てて反射を調べた。続いて、ノースカロライナ大学チャペルヒル校から提供された死んだイカ5匹と、座礁したマッコウクジラの胃から見つかったイカのくちばし5個についても同じ実験を行った。 実験の結果、9種類のプラスチック製品すべてから、イカと同等以上の強いエコーが返ってくることが明らかになった。この発見は、外洋ではなく海水の水槽で行われた予備的な研究(6月に国際水中音響会議(ICUA2024)で発表されたが、学術誌には発表されていない)を補完するものである。 6月の研究では、イカに最も近いエコーが得られるプラスチック製品は、クジラの胃から見つかることが多いポリ袋やプラスチックフィルムであることも明らかになった。
海水ごと餌を吸い込む
深海に生息するハクジラが、エコーの強弱以外の方法で餌とそうでないものを区別しているかどうかは不明だが、専門家はおそらく区別していないと考えている。間違いなく食感は使っていないだろう。 「ハクジラは私たちのように食べ物を咀嚼(そしゃく)したり味わったりせず、ただ吸い込むのです」と、6月の研究の筆頭著者で、ポルトガルのマデイラにある海洋環境科学センターの海洋生物学の博士課程学生であるラウラ・レダエリ氏は言う。 吸い込んでしまってから食べられないことに気づいてももう遅い。 クジラが気づくはずがない。プラスチックが発明されるまでは、彼らが深海で強いエコーを返すものに出会ったら、それはおそらく生物であり、食べられるものだったからだ。 「彼らは海で食べ物以外のものに出合うとは思っていません」とメリル氏は言う。「ですから、そのシグナルを返すものに出合ったら、何も疑わずに食べてしまうのです」