『ゴジラ』作曲者が「ハリウッド版」を見て、覚えた違和感…元祖ゴジラとの「決定的な違い」があった
映画音響に起きた革命
――当時の映画音楽のマスター音源はレコードと同じように6ミリ磁気テープが使用されていたわけですね。 1954年に初めて6ミリを使うんですよ。昭和29年。この年は音響的にもターニングポイントで、それ以前は全部光学録音でダビングの時はセリフも効果も音楽も一斉に録ってたんです。演奏家を揃えて、効果の人がいて。セリフだけは先に録音してたんだけど。 芥川(也寸志)先生から伺った話ですけど、『雪国』(1957監督:豊田四郎 音楽:團伊久磨)という映画で列車がトンネルに入るシーンがあって、そのトンネルに入る前から音楽をつけていたと。ところがトンネルに入っちゃうと、演奏家にも指揮している自分にも音が全然聞こえない。それでトンネルを抜けた時に僕の指揮棒と演奏が合ってた時はホッとしたよって。そんな時代でした。 東通工(ソニー)が6ミリの磁気テープを開発して東宝に持ち込んだのは1954年。これは偶然なんだけど、東宝で言えば『ゴジラ』と『七人の侍』が公開された年で、この2つは6ミリ磁気テープが残ってる。だけどあの当時は、映画の録音技師はまだ信用してなかった。フィルムと違って脇に穴ぼこが開いていないから、音がズレるっていうんです。だから本番には使わなかった。 『ゴジラ』も『七人の侍』も試しに6ミリを回したけど、本番はダイレクトの光学録音だった。でもそこで6ミリを回してくれていたおかげでこういうレコードを作れたわけなんです。おそらく6ミリ磁気テープを使ったのは東宝が最初だったと思います。映画の録音技師が信用して音楽が全部6ミリになるのは、2~3年かかったようです。6ミリでの録音っていうのは、僕らが今考えるよりもはるかに音楽業界の人にとっても映画業界の人にとっても画期的だったみたいで。作業が格段にやりやすくなった上、それまでの光学録音ではカットされていたハイとローの音がちゃんと入るようになって、音質的にも格段の違いが出たんですよね。 ――音響の革命になったその2作品の音楽が伊福部昭さんと早坂文雄さんだったというところに何か運命的なものが感じられますね。 本当にそうなんですよ。当時の6ミリ磁気テープを聴くと、時々現場の声が残っていたりする。「オッケー!」とか「ダメだよ!」とか、黒澤(明)監督の声が入ってたりして。あれはなかなかすごいものですよ。そういったものも込みで、現場の雰囲気を伝えられるサントラ盤を後世に残せるとさらに面白いかもしれないですね。