考察『光る君へ』14話 兼家(段田安則)が逝き、道隆(井浦新)の独裁が始まる。道兼(玉置玲央)は絶望、道長(柄本佑)は奮闘
大河ドラマ『光る君へ』 (NHK/日曜夜8:00~)。舞台は平安時代、主人公は『源氏物語」の作者・紫式部。1000年前を生きた女性の手によって光る君=光源氏の物語はどう紡がれていったのか。藤原兼家(段田安則)が逝き、長男の道隆(井浦新)が後継となった14話「星落ちてなお」。これは、まひろ(後の紫式部/吉高由里子)の運命にも大きく関わってきます。ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと、絵師・南天さんが各話を毎週考察する大好評連載14回です。
道長は上の空
自宅での、まひろ(吉高由里子)との思いがけない再会に道長(柄本佑)は、倫子(黒木華)との会話も上の空である。着替えの手伝いを断ったのは、愛する女に持っていかれた気持を他の女……妻に引き戻されたくないからだ。 倫子に気づかれるって道長。そういうのやめろっての。 「よい風だ」じゃないんだよ。
愛は憎悪に反転
兼家(段田安則)の出家宣言と後継指名。長男・道隆(井浦新)の継承は順当だが、予想通り道兼(玉置玲央)は激昂した。衰え切った兼家は、もうかつてのように道兼をなだめる手管は使えなくなっている。「お前のような人殺しが」心の奥底の本音が、直球でぶつけられてしまった。 そして道兼の口から出た、父への激しい暴言──父上にとって一番の息子になるという叶えられない愛は、憎悪に反転する。
「あれは良かったのう」
夫・兼家が出家し、意識朦朧としてもなお「道綱道綱道綱道綱」……寧子(財前直見)の刷り込み作戦は続く。 嘆きつつひとり寝る夜の明くる間はいかに久しきものとかは知る (嘆き悲しみながら寝る、孤独な夜が明けるまでの時間。それがどれだけ長いか、あなたはご存知ないでしょうね) 「あれは良かったのう」 妾の書いた『蜻蛉日記』を、兼家はちゃんと読んでいた。レビュー第5回で『蜻蛉日記』について触れたが、寧子の機嫌を取ったり家出した彼女を迎えに行ったりと、ふたりにとっての熱い時間が綴られている。第14話本編放送後のミニコーナー『光る君へ紀行』では、藤原兼家と藤原道綱母が宇治で詠み交わした歌が紹介された。 藤原道綱母 人心うぢの網代にたまさかによるひをだにも訪ねけるかな (他の女へと移りがちな、あなたのお心が辛いのです。たまに網代にかかる氷魚、ひお見物にでも、この宇治を訪ねていらしたんでしょう) 藤原兼家 帰るひを心のうちにかぞえつつ誰によりてか網代をもとふ (お前が帰る日を心待ちに数えていたんだよ。お前以外の誰を求めて網代を訪ねるものか。迎えに来たに決まってるじゃないか) これらを振り返り「輝かしき日々であった」とまで言う兼家。 『蜻蛉日記』という一大文芸作品を書き上げた作家、寧子にとって、愛する人が作品を読んだ上で認めてくれるのはとても嬉しいことじゃないですか……しかも今際の際に妾から送られた歌を諳んじて、夫婦としての時間ごと愛していたのだと告げるだなんて、最高の別れではないか。
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