考察『光る君へ』14話 兼家(段田安則)が逝き、道隆(井浦新)の独裁が始まる。道兼(玉置玲央)は絶望、道長(柄本佑)は奮闘
『光る君へ』における呪術
安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)が星を読む。今宵、星は落ちる。次なる者も長くはあるまいという不吉な予言。 熱心に呪詛に励む明子(瀧内公美)に襲い掛かる急な不調、絵に描いたような人を呪わば穴ふたつ。というよりも、親の因果が子に報い……お腹の子は可哀想であった。 しかしこの作品は、呪術が本当に効いているのか、不思議な力は現実に作用しているのか。そうであるかもしれないしそうではないかもしれない……と描いている。 呪いが成就したように見えるが、もともと兼家は老いて弱っていた。明子に呪いの報いが降りかかったように見えるが、妊娠初期に根を詰め、無理をしてしまったことが原因とも考えられる。曖昧なグラデーションが興味深い。 そして巨星堕つ、兼家の臨終。権力闘争を戦い抜いた男も、最期の瞬間は穏やかに旅立つか。と思いきや……。 欠けたる月を見上げて、「あそこにまだ、儂の思い通りにならぬものがあった」とでもいうような、この世の全てを掌中に握ろうとした男の業が湧き上がってくる様は圧巻であった。この表情がのちに「望月の欠けたることもなしと思えば」という、道長の世に繋がってゆくのではないだろうか。 放送初回から名優・段田安則の底力を毎週実感し、視聴者として幸せだった。拍手で彼の退場を見送ろう。
いと、ガッツポーズ
兼家の訃報にガッツポーズする、いと(信川清順)と、涙をそっと流す為時(岸谷五朗)。 「嬉しくても悲しくても涙は出るし、嬉しいか悲しいかわからなくとも涙は出るのよ」 というまひろの言葉に、きょとん……とする、いと。まったくもって彼女は平凡な人間である。勇気溢れる、才能溢れる、あるいは政治的歴史的に名を残した者ばかりではなく、さまざまな人物がいるのが大河ドラマである。だからこそ、いとの存在は好ましい。 そして、宣孝(佐々木蔵之介)が御嶽精進の御利益か、筑前守に! 「いよいよわしも国司になるぞ」と喜ぶ宣孝。国司とは、地方の行政を担うために朝廷から派遣される役人のこと。花山帝(本郷奏多)時代には六位蔵人であったので、従五位下の筑前守は確かに昇進だ。 佐々木蔵之介は『麒麟がくる』(2020年)羽柴秀吉以来、大河ドラマで2度目の筑前守就任である。
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