「イル・プレージョ」の姉妹店! 豊富なアラカルトに心躍るカウンターイタリアンが麻布台ヒルズに誕生
続く一品は温前菜。甘鯛のフリットだ。鱗揚げにした揚げたての甘鯛を口にすれば、鱗のサクサク感の後に続く身のふんわり感とホコホコした食感がたまらない。聞けば、甘鯛の中でも高級ブランドの丹後ぐじを使用。水揚げから流通まで細心の注意を払って扱われる甘鯛は、一流和食店でも珍重される逸品だ。
ここでふと気がついた。メニュー名代わりに書かれたほぼ全ての食材の横には産地が記されているのだ。例えば、先の馬肉には“会津”、ブリには“氷見”、月の輪熊には“秋田”といった按配。実は黒田シェフ、自他共に認める食材フェチだそうで、絶えず至る所にアンテナを張り巡らせ、良いと聞いた食材はすぐに取り寄せ試食。時間があれば、現地まで赴くこともあるとのこと。その努力の集大成がメニューに反映されている。
さて、野生味ある月の輪熊のボロネーゼスパゲッティをいただいた後のメインには、黒田シェフ一推しの豚肉のグリエを選択。といってもただの豚肉ではない。黒田シェフ曰く「天城黒豚と梅山豚、マンガリッツァ豚を掛け合わせた三元豚の肩ロース」だそうで、その名も「伊豆の極み」。
いずれも脂に甘みのある3種を種豚にしているだけあって、この「伊豆の極み」、肉自体の力強い旨みは言わずもがな、何と言っても脂身が素晴らしい。いい意味で全く脂感がないのだ。脂独特の、どこか粘膜を覆うようなもわっとした感じがなく、サクリと歯が入るテクスチャーは、最早、白身とでも呼びたいほど。
それもそのはずで、豚のおいしさの指標とも言えるオレイン酸の数値が半端なく高いのだ。オレイン酸とは、牛肉に含まれている不飽和脂肪酸の一つで、これが多いほど甘みがあり口溶けも良いと言われている。これが「伊豆の極み」には、なんと52%も含まれているというのだ。通常は、40%を超えれば上々。50%を超えるのはかなり希少と言われているだけに、いかに驚くべき数値かがお分かりだろう。
一方で、リノール酸は数値が低いほど食味が良いとされ、超優秀とされる10%をはるかに下回る3.7%と脅威の低さを誇っている。なおオレイン酸は、悪玉コレステロールを下げる効果が期待できると言われており、身体にもうれしい一皿といえそうだ。味付けも塩のみと極めてシンプル。