ファッション業界のメンタルヘルスの問題とは? ベルリンのクリエイティブエージェンシー代表のフロリアン・ミュラーに聞く
しかし、消費を完全に拒否することや人々にぜいたくをさせないことが目的ではありません。身体的、精神的に健康であるだけでなく、社会的、経済的にも良好で満たされている状態を意味する「ウェルビーイング」の実現が大切だと考えています。
――メンタルヘルスの問題を抱える人に対して偏見を持ってはいけいないことは一般的にも理解されていると思いますが、正しい接し方や解決方法を理解している人は少ないのではないでしょうか?個々の意識を変え、それを行動に移すためにはどうすればよいのでしょうか?
ミュラー:普遍的な解決策は存在せず、状況ごとに考慮する必要があります。まず、ファッション業界内の構造を改革し、メンタルヘルス問題から個人を守り、既に影響を受けている人々に適切なサポートを提供することが重要です。活動を行う中で、突然発生した急性のメンタルヘルス問題にどのように対処すればよいのか分からないという企業に出会いますが、メンタルヘルスに関するタブーが存在し、影響を受けた人々やその周囲がこの話題を避ける傾向があるためです。そのような企業には、職場のリーダーが適切に対応できるようにトレーニングを行い、問題を抱える従業員をフォローするための知識を提供します。直接的な治療を提供することが目的ではなく、問題を隠さずにオープンに議論できる環境を作ることが重要です。
さらに、教育機関や企業がメンタルヘルスについて学び、どのように労働環境を改善できるかを教えることも重要です。私の授業では、学生たちに過剰消費の実践的な代替案を見つけさせ、供給チェーン全体に対する理解を深めさせ、過剰消費に伴うメンタルヘルスの負担が、労働者、モデル、デザイナー、PRなど、供給チェーン全体にどのように影響を及ぼすかについても議論しています。
――文化服装学院とエスモード東京で講演されていますが、いかがでしたか?
ミュラー:キャンペーンを始めて以来、「ファッション業界におけるメンタルヘルス」に言及することが難しいと認識しています。それは、しばしばデリケートなテーマと見なされるからです。そのため、講演の機会を与えてくれた両校にはとても感謝しています。この重要なテーマに真剣に取り組んでくれた学生たちすべてに尊敬の意も込めてとても感謝しています。学生たちが自身のメンタルヘルスに関する経験や、ファッション業界における視点を率直に共有してくれたことに非常に感動しました。まさに、私が目指しているのはこのような対話です。私が学生だった頃と比べて、今の若い世代はメンタルヘルスについてはるかにオープンであり、それが私に大きな希望を与えてくれました。