ファッション業界のメンタルヘルスの問題とは? ベルリンのクリエイティブエージェンシー代表のフロリアン・ミュラーに聞く
――多様性が重要視されている時代ですが、ファッション業界における精神疾患への差別や偏見とは具体的にどのようなことですか?
ミュラー:ファッション業界における多様性はますます強調されていますが、精神疾患に関しては見落とされがちです。ファッション業界では、外見の美しさに価値が置かれる傾向がありますが、それだけでなく、ファッション業界が常に推奨する完璧なイメージ、つまり誰もが憧れる華やかな世界で抱えている問題を見たくもないし、見せたくもないのです。
また、精神的な問題を抱えていることを公表することが難しく、多くの人々は精神疾患があることによって職を失ったり、自分の評判を落とすことを恐れ、誰かに話すことさえできない。燃え尽き症候群も同様ですが、勤勉や献身の証などと見なされ、オーバーワークが美化される傾向もあります。そのために燃え尽き症候群は深刻な問題として認識されず、うつ病や不安障害など深刻な問題を抱えていてもきちんとサポートされない一因となっています。
――サステナビリティが常識となる中で、過剰消費がメンタルヘルスに悪影響を与えることはあまり知られていないように思いますが、具体的な問題とは何ですか?
ミュラー:サステナビリティはファッション業界においてトレンドや常識として描かれることが多いですが、たとえ「サステナブル」とラベルに記されているブランドであっても供給チェーン全体を保護しているとは言えません。「サステナブル」という言葉を使えば、環境に優しく、フェアトレードであるという印象を与えるかもしれませんが、実際には依然として重大な問題があり、解決もされていません。
過剰消費については、大量生産による環境への悪影響だけでなく、精神疾患に対しても深刻な悪影響をもたらしています。これは消費者だけでなく、供給チェーン全体にも同じことがいえます。例えば、低賃金の労働者は常に不安定な条件や環境に恐怖を覚え、メンタルに負担をかけています。デザイナーやモデル、PRなどは、より多く、より早く生産することへの圧力から燃え尽き症候群や他の精神疾患の問題を抱えるリスクが高まります。