【ひねもすのたりワゴン生活】滋賀から城崎、そして神戸 5日間1500㎞のクルマ旅 その14
かつて、豊岡の一帯は柳行李の一大生産地だったが、時代の流れと共に柳行李は需要が減っていった。しかし、柳行李を作る優れた技術をカバンの製作に活かし、現在に至っているのだという。豊岡のカバン産業の誕生には、あの柳行李が深く関わっていたのである。いや、柳行李の文化がなければ、現在のカバン産業の隆盛はないと言ってもいい。 さらに………。出石でコリヤナギの枝を選別している光景を見かけたこと、店の名はたくみ工芸だったことを伝えると、「あぁ、コリヤナギの栽培から商品の製造まで一軒ですべて手掛けているのはあそこだけになってしまいました」と言う。たまたま立ち寄ったあの店がまたここで繋がった。 大学の授業でたまたま寄った商店街で、それも偶然入ったカバン工房で、蕎麦のついでに立ち寄った柳小売店との縁が結ばれた不思議……これだから、クルマ旅はやめられない。
5日間で1500㎞。いつものように、思いつきと寄り道の繰り返しだったけれど、忘れられない思い出が連なる至福の旅となった。そして、縁の不思議が身に染みた旅でもあったのである。
【筆者の紹介】 三浦 修 BXやXMのワゴンを乗り継いで、現在はEクラスのワゴンをパートナーに、晴耕雨読なぐうたら生活。月刊誌編集長を経て、編集執筆や企画で糊口をしのぐ典型的活字中毒者。 【ひねもすのたりワゴン生活】 旅、キャンプ、釣り、果樹園…相棒のステーションワゴンとのんびり暮らすあれやこれやを綴ったエッセイ。