コミック・文芸好調 講談社の今後の戦略
自社ブランディングも次のステップへ
講談社が世界へ向けたブランディングを始めていることは昨年のこの特集でも報告した。社長室コーポレート企画部が担っているその取り組みは、新たなステージに入っている。23年6月に同部署へ異動してきた森本達也部長に話を聞いた。 「海外では講談社のコミック作品のキャラクターなどは知られているのに、講談社自体がほとんど認知されていません。そこで講談社自体のブランディングをやろうというのが取り組みの趣旨です。例えば『おもしろくてためになる』という講談社が掲げてきた言葉を英語で表したらどうなるかということでInspire Impossible Storiesというメッセージを打ち出したり、ロゴマークを全面的に刷新したりしてきました。そのうえで2024年は、海外でのブランディング展開を本格化させようということで現在いろいろ企画しています。 具体的には、まずアメリカに軸足を置いて取り組もうと考えています。講談社はニューヨークにKODANSHA USAという子会社がありますし、組織的にもかなり充実してきました。そこを足がかりに、講談社ブランドの展開を進めていきたいと思っています。 同時に、講談社のファンになってくれている人たちはどんな人たちなのか、その調査を重点的に行いました。この調査結果をもとに、どういった人たちにどのようにアプローチしていくべきかという方針が固まってきたところです。 114年余の歴史を誇る総合出版社というのは今の日本国内でのブランドイメージなんですけれど、実際はかなり出版以外のことをやっているわけです。アニメ制作への出資だったり、ゲームもそうですし、ライブイベントをやったりもしています。実像が結構変わってきているという、その講談社のブランドイメージを、国内においても、もっと伝えていきたいと思っています。 ブランドが世の中に染みわたっていくプロセスは多面的で、CMや広告だけじゃないと思うのです。例えば『スターバックス』は別にCMをたくさん打っているわけじゃないですが、サービスや、カフェの空間など、一貫性があって、総合的にブランディングを行っています。講談社もロゴをいろいろな場面で出していくとか、ソーシャルメディアを採用活動と連動させて、魅力的な会社で面白い人がいるよと発信していくとか、様々な方法を考えたいと思っています」 森本部長が関わってから半年、年明けからは具体的な施策が始まるという。わかりやすい形で変わったのが、社内のカフェテリアだ。 「以前の社員食堂のあったスペースを、このブランディングの考えに合わせて全面改装しました。やはり人が出入りする空間は重要だと思うんです。社員が作家さんやお客さんと打ち合わせできるようなスペースに、会社がこういうイメージを打ち出していきたいと考えているものを表現しています」(森本部長) 百聞は一見にしかず、ということでインタビューの後に見学させてもらった。講談社には取材で何十年も訪れており、社員食堂にも入ったことはあるが、そのフロアスペースが全面的にリニューアルされていた。しゃれた空間に、講談社のKという文字の入ったロゴマークがいたるところにデザインされていたり、過去の歴史的な本や雑誌が展示されている。講談社は1階のオープンスペースも映像を流したり、改装されてきたが、ホワイエと呼ばれる社内のこの空間もイメージが刷新された。最終的に改装が終わったのはごく最近だという。 日本の代表的出版社とされる講談社は、アニメ・ゲーム事業の報告にあるように業態も変わりつつある。今後、どういう方向へ向けて舵を切っていくのだろうか。