2024年開幕のハンドボール「次世代型プロリーグ構想」は成功するのか?
そもそもハンドボールは競技人口が約10万人でスローではあるが直近20年で見れば増加傾向にあり、東京五輪では男子が33年ぶり、女子が45年ぶりに1勝を挙げ注目を集めた。その効果からか、JHLのYoutube公式チャンネルの登録者数は、ほんの8か月間で約6000人から約1万2000人に増えた。だが一方でJHLの集客は徐々に下がっている。 2016ー17年は1試合平均831人だったが、2019ー20年は574人で、さらに1チームの年間支出は約2億円はかかるにもかかわらず、収入は約1000万円程度しかない。 男子リーグの最多勝利記録を持つ大同特殊鋼など実業団チームがリーグの7割を占め、 チームの保有理由は社内の一体感を生むための福利厚生の側面が強い。一方でジークスター東京のようなスポンサーを集め、運営資金を作る独立法人化した数少ないクラブチームが混在している状況。実業団チームは、親会社の景気に左右され、クラブチームは資金繰りがうまくいかねば破綻する。今回、日本ハンドボール協会が、葦原氏を招き、真剣にプロ化に舵を切った背景にはハンドボールの根幹を担うリーグをサステナブルなものにしたいとの悲壮な覚悟が込められている。 「どのチームも、このままじゃいかん、変えていこうという気運が強いんです」 Bリーグ方式では、例えば会場内の広告看板ひとつをとってみても、置く場所に関してリーグ側とチーム側の摩擦が起きる。コート横の場所もチームは高価格チケットにしたいチームに対して、放映権を持っているリーグはカメラを置きたい時もある。 これに対しリーグ一括運営ならば「細かく言えば100個も200個もあるコンフリクト」(葦原氏)を解消できる。 そして最大の利点がデータをすべて管理できることだ。試合の放映もスマホを意識した自前の有料ネット中継を考えており、チケットを買ってもらっている人と、配信映像を見てもらっている人の顔がハッキリと見えることで、強みも弱みも明らかになり、あらゆるデータの紐づけが可能となる。都市伝説的だった「テレビ中継が増えると来場者が減る」といったような根拠のない曖昧なデータ分析がなくなり、綿密なデータを様々な事業戦略に落とし込むことができる。 これを葦原氏は「スーパーDX」と名付けた。つまりベンチャー的なスポーツビジネスの最先端をハンドボールリーグが走ることにもなるのだ。 「把握できるデータ量と質が他の競技団体と圧倒的に違ってきます。ここは生命線であり、スポンサーやパートナーの最大のメリット。とことんそこでとがりたい」 成功すれば、そのノウハウ自体でビジネス展開をすることも可能かもしれない。 事業規模としてはBリーグのB2のイメージだという。B2は1試合平均1500人の観客を集め、平均3億円の売り上げ。葦原氏は、B2より試合数が少ないため3年後に1チーム平均の売り上げ目標を1.5億円と設定した。もし現在のJHLの21チームが、そのまま参戦するのであれば、年間約30億円規模の事業だ。