2024年開幕のハンドボール「次世代型プロリーグ構想」は成功するのか?
またリーグの一括運営の利点としては戦力均衡を図り、競争力の高いゲームを提供できることがある。戦力均衡を図るためには、ドラフト、サラリーキャップ制、チーム間収益分配の3つの手法があるが、「強いチームと弱いチームの環境、格差がありすぎる点」がネックとなっており、葦原氏も「戦力均衡は中期的にやりたい。いきなり最初からは難しい」との見方をしている。 そうなると戦力が偏り、チーム力に差が生まれることが危惧されるが、戦力補強に回せるような分配金の配分で均衡化できる工夫をしたいという。 今月参入チームの応募の受付けが始まっており、5月に審査、7月には新プロリーグの参加チームが決定する。JHLは8つの参入条件を定めた。 【1】理念への賛同【2】チーム名【3】アリーナ【4】財務【5】支援書【6】ユースチーム【7】選手契約【8】事業の8つで、【2】チーム名に地域名を入れることや【3】1500人以上のホームアリーナを確保すること【6】U-12カテゴリーのユースチームを保有もしくは提携することなどを条件にした。小学生以下のチームに絞ったのは「中高の部活でハンドボールを始める人が圧倒的に多く、その下の世代でやる人が少ない」(葦原氏)からだ。 【7】では「プロ契約選手が11人以上」という具体的な数値を入れ込んだ。ただ完全プロではなく、他の仕事との兼業が認められているのが、新リーグの特色のひとつ。 「デュアルキャリア」と言われる形で、アスリートのセカンドキャリアを支援するためスポーツ庁も推奨している。JHLは選手アンケートを行い、兼業を求める声が29%に至ったことも、完全プロ化を求めず実業団の長所を生かしたスタイルを採用する理由のひとつになった。 また【5】は、行政からの支援の確約書の提出。これを条件にした理由は、「行政からの補助金目当てではなく、アリーナの優先利用、減免、動員協力などを得たいのです」と葦原氏は説明する。 「チームを振り落としたいから参入基準を設定しているのではありません。より良い環境で選手たちにプレーさせてあげたいし、より質の高いものをファンの皆様にご提供するために設定させて頂いております。基準もBリーグに比べると高くない」 JHLの21チームがそのまま、新プロリーグのチーム数になるかどうかもわからない。葦原氏は、「チーム数の想定はしていません。基本的には全チームが新リーグにきて成功するのがいい」と、あえて新リーグの想定規模については語らない。むしろ既存チーム以外からの新規参入への期待もあり、すでに複数の問い合わせがある。 特にアリーナスポーツとの“相性”がいいため、Bリーグ保有チームが名乗りを上げる可能性もある。実際、BリーグのB2に所属しているアースフレンズ東京Zは、昨年、元日本代表の宮崎大輔を監督兼プレーヤーとして迎え入れたハンドボールチーム「アースフレンズ」を設立。今季からはJHLに参戦することになっている。 アリーナでは、プロ化にふさわしい派手な演出が期待される。葦原氏は、そのエンターテインメント性と連動し映像コンテンツに力を入れたいという。 「草原でやっていたイメージのカバディが、ガラっとエンターテインメントな見せ方をしているのがいい例。昔TBSでやっていた「東京フレンドパーク』の世界観が作れないかと考えているんです」。スタジオ内で少人数のファンの熱気の中で競う人気番組「東京フレンドパーク」をハンドボールの空間に重ねている。 だが、すべてがバラ色というわけではない。 最大の問題は、リーグからの配分金で運営するため各チームの営業意欲をどう喚起できるのかという点だ。(以下・その2に続く)。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)