帰国子女でもなく、海外留学もわずか1年の佐々木真理絵はなぜスポーツ通訳者の仕事に就けたのか?
人と人との間に立つ仕事に終わりはない。だからこそ、「この仕事が楽しいと思えるようになった」と佐々木は笑う。 「もちろん、大変なことはたくさんありますが、それはやりがいがあるということでもあって。大変なことこそが面白い。いろいろな国から、さまざまな性格の人がやってきます。言葉はもちろん、食べ物の好みも、生活スタイルも違います。以前はそういうことをストレスに感じることもありましたけど、今は楽しいと思えるようになりました」 【スポーツ通訳者にとって大切なこと】 さまざまなスポーツの現場を見ると、海外在住経験を持つ通訳が多い。しかし、必ずしもそれが必要だと佐々木は考えていない。 「もちろん通訳者というポジションになるには、英語力やその他の語学力が必須です。スポーツ業界でいえば、外国と交わらないスポーツはほとんどありません。海外遠征の機会も多いので、英語を話せるほうがいい。競技によっては、英語だけではなくて、スペイン語、ポルトガル語、中国語が必要になることがあります」 佐々木の留学期間は1年だけだったが、その後、チームに帯同しながら、外国人選手やコーチから英語を学ぶことができた。 「スポーツだけではないと思いますが、組織にとって大切なのはチームワークじゃないですか。いい人、優しい人というだけではダメなんですが、相手の気持ちを考えられること、協調性は必要です。もしかしたら、語学力以上に大事なことかもしれない」 アメリカ育ちでも帰国子女でもない佐々木だからこう考える。 「もともと英語力があるネイティブの人に比べて、心が折れることが私にはありました。1年間しか留学経験がないし、いまだにネイティブレベルには届きません。通訳という仕事を始めてから、大変なこと、困ることがたくさんありました。でも、頑張り次第でこうしてスポーツの通訳者になれるということを多くの人に知ってもらいたいですね」 (文中敬称略)
元永知宏●文 text by Motonaga Tomohiro