自分の体、命のことは自分で決めよう。”生ききる”までの治療法を考える【75歳からのがん治療】
大前提として、現状と見通しの共有が必要です
がんの積極的な治療を受けるか、受けないかといった重要な選択は、現状をきちんと理解したうえでおこなわれるべきものです。 がんの状態や適切と考えられる治療法、今後の見通しなどについての説明を、十分に理解できるかどうかは人によって違います。高齢の患者さんに対して、医療者はわかりやすく伝えることを心がけていますが、思い違いが生じることもあります。本人がいやがらないかぎり、家族もいっしょに説明を受けておくとよいでしょう。
適した治療法を考える3つの観点
がんの標準治療は、がんそのものの状態に合わせて示されています。しかし、実際にどんな治療が可能かは、患者さんの状態をみながら考えていく必要があります。 (1)治療に関すること ・利用できる医療機関は。通院が可能か ・入院の必要性や、入院期間 ・期待できる治療の効果は ・治療にともなうリスクは。どのような副作用が出やすいか ・緊急時の受け入れ先は ・症状に対する治療(支持療法・緩和ケア)が必要か (2)がんの状態 ・病名: 正確な病名を知ると情報を集めやすい ・進行の程度(病期/ステージ): 進んでいるほど強い治療が必要になるが、ステージが高いから終末期というわけではない ・がん細胞の特徴: 増えるスピードが速いものは「悪性度が高い」といわれる ・治せる可能性: 極度に進行していれば積極的な治療は難しい (3)患者さん自身のこと ・併存症(がん以外の病気)はあるか ・心身の状態は良好か。積極的な治療に耐えられそうか ・積極的な治療に取り組む意欲があるか ・治療・療養中の生活を支える人はいるか ・経済的な問題はないか ※お金がないと治療は受けられない? そんなことはありません。お金がかかる治療ほどすぐれた治療ともいえません。75 歳以上の高齢者の大半が加入する後期高齢者医療制度が適用される治療なら、一定の自己負担額を超えた医療費は、高額療養費として支給されます。生活に困窮している人が利用できる制度もあります。 次回は<「これからの生活で何を大事にしたいか」が治療法の指針になる【75歳からのがん治療】>です。
小川 朝生(国立がん研究センター東病院臨床開発センター精神腫瘍学開発分野長)