税制改正大綱でも議論された富裕層への課税強化策、「貯蓄から投資へ」の政策課題を阻害しないか
所得課税の強化
平成15(2003)年6月、政府税制調査会は小泉純一郎首相からの指示により「少子・高齢社会における税制のあり方」の中期答申をまとめました。この答申にある「その他の課題」の項に「金融・証券税制」が記述されています。 この「金融・証券税制」の特徴として、金融資産性所得に対する課税に関しての政策要請として「貯蓄から投資へ」の具体策として、貯蓄優遇税制や株式等譲渡益課税の見直しが進められてきました。 政府税制調査会金融小委員会は、上述した「中期答申」をさらに具体化すべく、「金融所得課税の一体化についての基本的考え方」を平成16(2004)年6月に作成しました。 この小委員会答申以降、北欧で導入されている「二元的所得税」が検討されました。 以上の変遷がありましたが、金融所得課税一体化のための、「二元的所得税」の導入に関する検討は、成果を上げるに至りませんでした。確かに日本は、金融所得に源泉徴収課税を適用していることから、二元的と評価するむきもありますが、「二元的所得税」に完全に切り替えたわけではありません。 富裕層に対する課税強化として、「金融・証券税制」を改正する場合、25年にわたる政府の政策課題である「貯蓄から投資へ」が阻害されることになります。この辺りの政策のバランスは、税制というよりも、政治の問題ではないでしょうか。 矢内一好 国際課税研究所首席研究員
矢内 一好
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