料金の大幅な値上げも? 災害に弱く劣化も進む。どうする日本の水道 #災害に備える
料金の大幅値上げも? 水道維持管理のコスト
日本の上水道普及率は2022年3月末時点で約98%(簡易水道、専用水道を含む)、下水道普及率は約80%と広範囲でカバーされている。一方で、今回の震災で露呈したように、災害に強いとは言い難い一面もあり、災害に備えて設備を更新するのにも膨大な費用が必要となる。 2024年4月24日に発表された、コンサルティング企業EY Japanと水の安全保障戦略機構の最新の共同研究結果「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?(2024版)」によると、2046年度までに水道料金の値上げが必要と推測されるのは、全体の約96%となる1199事業体。また、約4割は今後3年以内(2026年度まで)に値上げが必要と考えられている。 橋本氏「水道料金は、水道設備の維持や施設の運営にかかるコストを、利用者(人口)で割って計算されるので、事業者(主に自治体)によって異なります。つまり、コストの増加と利用者数の減少が料金値上げの主な原因なのです。水道管を新しいものに交換すればそのぶん水道料金も値上げされます。工事のしやすさにもよりますが、目安として、1キロメートルの水道管を直すのに1億~2億円かかると言われています。さらに、人口減少も相まって、水道料金の値上げは避けられません。水道料金の自治体間格差は、現在の8倍から、20年後には20.4倍になると言われています」
水ジャーナリストに聞く、未来の水インフラ
災害、老朽化、維持費用の高騰。様々な要因から日本の「水のインフラ」は現状を踏まえて再構築すべき段階にきているのかもしれない。では、これからの水インフラはどうあるべきなのだろうか。 橋本氏「日本は水に恵まれていると思われがちですが、実はそうではありません。降水量は世界平均の約2倍ですが、それを人口で割ると世界平均の3分の1程度になってしまいます。ですから、限りある水資源をみんなで使っていくためには、インフラをみんなで支えることが非常に重要なのです」 社会全体で水のインフラを支える。もちろん、そこには水道設備や施設、農地などで働いていなくとも、水の恵みを受けている私たち市民も含まれる。では、どのように水のインフラについて考え、行動すべきか。 橋本氏「2024年1月の能登半島地震で改めて感じたのが、水道のことを意識する時代がやってきたということです。これまで水道について、“無意識”になるような政策がとられてきました。『365日24時間、安全な水が送られてくるので、水道のことは心配しないでくださいね』と。しかし、これからは水道のことを意識して、どういう水インフラを整備すべきか市民自ら声を上げ、選択することが重要な時代になってきていると考えています。 水インフラには、浄水場や下水処理場などの水処理施設と水道管によって成り立つ従来の『大規模集中型』と、集落や集合住宅、家庭ごとに水を処理する『小規模分散型』の仕組みがあります。『大規模集中型』は様々なところにつながっているので、浄水場や水道管など、どこかに不具合が生じると全体に影響を及ぼす可能性があります。