料金の大幅な値上げも? 災害に弱く劣化も進む。どうする日本の水道 #災害に備える
小規模分散型の仕組みの活用の重要性が増す今、こうした生活用水システムは様々なものがあり、既に日常的に利用している地域もある。その一例が、ヤマハ発動機株式会社の小型浄水装置「ヤマハクリーンウォーターシステム(以下、YCW)」を導入した長崎県五島市福江島半泊地区だ。 YCWは川や湖などの水を砂で物理的にろ過し、さらに水中の微生物の働きによってより細かな物質を浄化する「緩速ろ過」という自然界の仕組みを応用した浄水装置だ。専門家によるオペレーションや大きな電力、特別な薬品等を必要としないため、住民らがメンテナンスをすることができる。
同地区では、宿泊施設「Philosophers in Residence GOTO(フィロソファーズ・イン・レジデンス・ゴトウ)めぐりめぐらす」で実証事業として2022年10月にYCWが設置された。2024年4月の実証事業の完了にあたって寄付され、引き続き宿泊施設と近隣の住民に利用されている。五島市役所地域協働課によれば、同システムの導入によって単に水を得る手段が増えただけでなく、水道未普及地域での新たな産業が可能になったという。 「福江島半泊地区は水道未普及地域で自治体が管理する上下水道施設がなく、民間の方が山の湧水をろ過して管理してきました。生活には基本的に困ってはいなかったのですが、廃校を活用して宿泊施設をつくるプロジェクトが始まり、浄水設備が必要となったため、YCWを導入したのです。現在は宿の方が管理されていて、住民の方も何かあればそこの水を使えるようにしています。2022年12月にはジンを製造する『五島つばき蒸溜所』もできたのですが、水道未普及地域でありながらそうした産業ができ、おかげさまで『GOTOGIN(ゴトジン)』は人気商品となり、地域活性化にもつながっています」
私たちが生きるためにも、より豊かな生活を送るためにも欠かせない水資源。蛇口をひねればいつでも出てくるのが当たり前だが、実はその「当たり前」はいつ崩れてもおかしくないのだ。しかし、その「当たり前」が「当たり前」であり続けるための手段はある。これからも水の恵みを享受し続けるため、その手段を知り、水道を意識して選択していくことが私たちに求められている。