料金の大幅な値上げも? 災害に弱く劣化も進む。どうする日本の水道 #災害に備える
今回の地震では、珠洲市の9割の世帯に水の供給を行う宝立浄水場が被災した。取水管が破断したことに加え、総延長243キロメートルに及ぶパイプの多くの箇所で破損があった。家屋の倒壊や土砂崩れにより寸断された道路の復旧が遅れた影響で、水道管の修繕が進まなかったといわれる。清水浄水場は、土砂崩れの影響でたどり着くのが難しく、6月末時点では復旧していない。また、水道管が復旧した地域でも、家屋内のパイプ破損で実際に水道が使える家庭は半分ほどともいわれる。 また、市民の約半数が公共下水道が整備された地域で暮らしていたが、地震により市内の下水管の94%が被害を受けた。東日本大震災や熊本地震では約30%の被害といわれており、被害の大きさがうかがえる。さらに浄化槽でも亀裂が入るなど、排水処理の問題は大きい。 これは能登半島だけの問題ではない。水ジャーナリストの橋本淳司氏は水道管の劣化や、進まない耐震化による、日本全土における水道の脆弱性を指摘する。 「多くの水道管が経年劣化でボロボロになってきています。法定耐用年数を超えた管路は2021年度時点で22.1%。そして、上水道の漏水・破損は年間2万件以上、下水道の破損に起因する道路陥没は年間2600件も発生している状況です。お金と人手が足りず、対応が進んでいないのです。 また、耐震化も進んでおらず、送水管や配水本管(給水管を分岐しない配水管)といった、水道を支える重要な基幹管路の耐震化状況は2022年度末時点の全国平均で42.3%。地震の揺れに強い耐震管の普及率が低いうえ、土砂災害警戒区域内に位置しながらも土砂災害対策が実施されていない水道施設もまだ多くあります。全国にある水道施設のうち、土砂災害発生時に1日平均給水量以上の給水が確保できない水道施設は2068施設と、全体の10%を占めている(※2019年時点)のです。2024年1月の能登半島地震でも、断水は解消したものの、長期で水道が復旧しないとされている地域も一部あります。その中には、液状化によって到達できなくなっている浄水場なども含まれているのです。自分が住んでいる地域で今は断水していないだけで、いつどこで能登のような状況になってもおかしくない状況にあるといえます」