なぜ期待の“最速トリオ”は男子100m予選で惨敗したのか…重圧と見誤った世界のレベル
テレビカメラの前に姿を現した山縣は、「すごく緊張しました」とまずは素直な感想を口にした。その後は、「まだまだ納得いっていない部分があります。スタートからいい流れを作れれば、自分のレースになると思うので、次があればそこを修正したいです」と話していた。 準決勝に進出したらどんなレースをしたいのかという質問には、「いつも準決勝が壁なので自己ベストを狙える走りをして、また次(決勝)につながればいいなと思います」と答えていたが、その機会はめぐってこなかった。 タイム通過の3人は10秒05、10秒10、10秒12。山縣は0.03秒届かず、まさかの予選敗退となったのだ。 キャリア十分で大舞台に強いはずの山縣だが、日本選手団の主将を務めた地元開催の五輪は想像以上の重圧があったのではないだろうか。 「五輪は特別なレースですけど、初めてではありません。大きい試合の前は自分のやりたいレースを決めてスタートラインに立つのが自分のルールで、それはできました。そういう意味で心理的な要因があったとはあまり考えていないですね」 山縣は今回も「納得いく調整をしてきたつもりだった」と言うが、予選の走りは納得いくものではなかったという。 「何かが違う」という疑問を感じていたようだ。 「準決勝、決勝を見据えて10秒0台はほしいなかで、そういうレースができなくて残念でした。スタートはもう少し楽に飛び出したかった。それも含めて調整の問題だったかなと思います」 男子100mは日本選手権を勝ち抜くのが熾烈だっただけに、代表権を獲得して、気持ちのうえで安堵してしまった部分はあっただろう。そして無観客開催となったことも日本勢にとってはマイナスに作用した。 サッカーはアウェーチームよりもホームチームの方が圧倒的に有利だ。陸上も似たような部分がある。2017年ロンドン世界選手権では7万人もの大観衆がスタジアムを埋め尽くすと、地元・英国の選手が大活躍した。選手紹介では大きな拍手が起こり、スタジアムは熱気に満ちていた。非日常的な空間が特に自国のアスリートたちの力を引き出していたように思う。