「大腸がん」と単純糖質の摂取量に関連なし、ただし女性は「直腸がん」リスク上昇傾向
国立がん研究センターがん対策研究所の研究グループは、「糖質摂取と大腸がんの関連を部位別に解析したところ、単純糖質の摂取量が多い女性は直腸がんのリスクが上昇傾向を示した」と発表しました。この内容について甲斐沼医師に伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
研究グループが発表した内容とは?
編集部: 今回、国立がん研究センターがん対策研究所の研究グループが発表した内容について教えてください。 甲斐沼先生: 国立がん研究センターがん対策研究所の研究グループは、日本人における単純糖質の摂取と大腸がんとの関連性を検討しました。 今回の研究では、1995年および1998年に全国10地域の保健所管内に在住していた45~74歳の男性4万2405例、女性4万8600例の合計9万1005例を対象におこなわれました。調査開始時の食事摂取頻度調査票の回答をもとに、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、ショ糖、麦芽糖、乳糖といった6種類の単純糖質摂取量と、合計単純糖質、合計果糖の摂取量を推定して五分位に分け、最も摂取量が少ない第1五分位群を対照群としました。 解析の結果、男女ともに各単純糖質、合計単純糖質、合計果糖の摂取量と大腸がん罹患については、有意な関連は認められませんでした。ただし、大腸がんの部位別に解析すると、女性の直腸がんと合計単純糖質摂取量については、摂取量が多い群ほど罹患リスクは有意な上昇傾向を示したことがわかりました。 今回の結果について、研究グループは「単純糖質の摂取量と大腸がん罹患に明確な関連は示されなかった点は、欧米の先行研究とも結果が一致していた。一方で、日本人中高年女性の直腸がんに関しては、合計単純糖質摂取量とリスク上昇との関連がみられた」と結論づけています。また、男性ではなく女性にこうした傾向がみられたことについては、「女性は男性よりも糖質を多く摂っていたこと、摂取源は菓子類が多かったことが影響した可能性がある」と指摘しています。さらに、部位で違いがみられた理由については「日本人の場合、単純糖質の主な摂取源の1つに果物がある。果物の予防的な働きが結腸と直腸で異なる可能性がある」と考察しています。