「大腸がん」と単純糖質の摂取量に関連なし、ただし女性は「直腸がん」リスク上昇傾向
大腸がんとは?
編集部: 今回の研究対象になった大腸がんについて教えてください。 甲斐沼先生: 大腸がんは、直腸と結腸からなる大腸に発生するがんで、良性のポリープががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものに分類されます。日本人はS状結腸と直腸にがんができやすいと言われています。大腸の粘膜に発生した大腸がんは大腸の壁に深く侵入し、やがて大腸の壁の外まで広がり腹腔(ふくくう)内に散らばります。さらに、リンパ節転移をしたり、血液の流れに乗って肝臓、肺など別の臓器に遠隔転移したりします。 症状については、早期では自覚症状はほとんどありません。代表的な症状として、血便や下血がみられます。また、進行してくると腸閉塞となり、便は出なくなり、腹痛や嘔吐(おうと)などの症状が起こります。⼤腸がんは男性では11⼈に1⼈、⼥性では13⼈に1⼈が⼀⽣のうちに⼀度はかかると言われています。
今回の発表内容への受け止めは?
編集部: 国立がん研究センターがん対策研究所の研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。 甲斐沼先生: 大腸がんは世界的に見て、がん罹患率の3位、がん関連死亡の2位に位置し、日本人では大腸がんは臓器別で男女ともに2番目に多いとされています。そのような状況の中で、大腸がんの発症率と肉類やアルコールの摂取などを含む食生活との関連性はこれまで多く報告されてきた一方で、糖質との関連を検討した報告は乏しく、特にアジア人を対象とした既報は症例対照研究に限られており、エビデンスが不足していた現状がありました。 今回の研究成果を通じて、特に日本人の中高年女性の直腸がん罹患率に関しては、合計単純糖質摂取量とリスク上昇との関連性が認められたと結論づけられており、今後の周知啓蒙が期待されます。ただし、本研究内容の限界点として、追跡期間中の食事変化の影響を排除しきれていないこと、あるいは単純糖質の摂取量を推定する際に計算対象となった食品が限定されていたことなどが挙げられているので、今後さらなる研究の追求や症例数の蓄積が必要であると考えられます。