大盛況だった Twitch の大物クリエイター、カイ・セナト氏のライブストリーミングイベント。ただTwitchにとっては諸刃の剣かもしれない
大物クリエイターへの依存
Twitchは、なぜセナト氏のチャンネルの削除を避けたがったのか? その理由は数字を見れば明らかだ。Twitchストリーマーの成績や活動を追跡する統計データ/分析プラットフォームのサリーグノーム(SullyGnome)とツイッチ・トラッカー(Twitch Tracker)のデータによれば、Twitchの11月の全視聴時間の5%近くを、セナト氏のチャンネルが単体で占めている。 Twitchがなければ、セナト氏がいまのような名声を手にすることはなかったかもしれない。だが他方では、いまやTwitchも同氏のようなトップクリエイターに依存して、視聴者のエンゲージメントを維持している。 しかし、ブランドセーフティをめぐる問題が大きくなるにつれて、Twitch最大のスターであるセナト氏が、広告部門の立ち上げを目指す同プラットフォームのお荷物になってしまうおそれもある。この現状は、規模拡大路線を継続するTwitchが抱える、もっと大きな意味での課題の縮図でもある。同社のコンテンツとビジネスモデルは全面的にクリエイターに大きく依存している。そしてこれが、Twitchの首脳陣にもコントロールが難しく、コントロールできないとさえいってもいい、ブランドセーフティをめぐるリスクに同社をさらしている。 オーバーウルフ(Overwolf)のブランドパートナーシップ担当ディレクター、チャド・デ・ルカ氏は、「ライブという環境に潜むリスクは、その環境を自分でコントロールしないかぎり、広告バイイングによってロックが解除されたAmazon制作のプレミアムライブ配信のような場合、最高のサービスも受けられないし、モデレーションのためのさまざまな手段も講じられないということだ」と話す。 同氏は2019~24年にツイッチ・プロパティーズ(Twitch Properties:ツイッチ・ライバルズ[Twitch Rivals]やツイッチコン[TwitchCon]同様、Twitchが所有・運営するサービス)の商業化を主導した人物だ。「ブランド適合性を正しくコントロールせずに出稿する。あるいはストリーマーと仕事を直接する。そのような場合、配信はどうなるのか? さまざまなケースが考えられるが、基本的にはストリーマーが取り返しのつかないことを口を滑らせて話したり、行ったりといったリスクが上がることになる」。