深宇宙に開かれた“港”「宇宙エレベーター」 大林組が語る2050年の未来
建設費は約10兆円
大まかに試算して、駅やケーブルの建設費は約10兆円くらいになると見ています。リニア中央新幹線が数兆円規模ですので、宇宙エレベーターのメリットが認識されれば、実際に投資が行われる可能性は十分あります。 ケーブルの建設方法を検討したところ、施工には約20年かかるとの試算結果がでました。ケーブルを静止軌道上まで運んで、地球上に向けて、それから地球と反対側に向けてそれぞれ伸ばす作業に約1年。残りの年数で、ケーブルを太くしていく作業を行います。 ケーブル材料は、鉄よりも軽くて強いカーボンナノチューブ(CNT)の使用を想定しています。最初、静止軌道に運ぶ約9万6000kmの長さのケーブルは、最大幅48mm、厚さ0.004mm(4μm)で、重さは20t。ロケットで運べる精一杯の重さです。ケーブルをのばしたあとは、クライマーを何度も昇らせながら、リール状に巻かれたCNTをケーブルに貼り付けていきます。これを何度も繰り返して、最終的には厚さを1.38mmにまで増やします。この厚さにすることによって、ケーブルは重さ100tのクライマーが昇降できるだけの強度になるのです。
2030年建設開始なら、50年に運用開始できる可能性も
仮に、2030年にケーブルの建設を開始すれば、2050年に運用を開始できる可能性がある、と考えています。 宇宙エレベーターは、1つの国が単独で完成、運用すべきものではないでしょう。その国が宇宙関連ビジネスを独占する状況になりかねませんし、敵対国がケーブルなどを破壊する危険もあります。世界の平和が保たれないと実現しにくいプロジェクトと言えるかもしれません。やはり、宇宙エレベーターは世界各国が協調し、計画的に建設を進めるのが望ましいでしょう。逆に、この宇宙エレベーターのプロジェクトが、国際協調の契機になれば良いと考えます。 技術的にはまだまだ未熟で、課題はいくつもあります。代表的な課題は、ケーブルです。約9万6000kmもの長さのCNT結晶が必要なのに対し、現状の製法では私の知る限り3cmがやっとです。約9万6000kmのケーブルを作るには、技術的なブレークスルーが2つや3つは必要でしょう。隕石や宇宙デブリ(宇宙のごみ)、放射線からケーブルを守る技術も求められます。