深宇宙に開かれた“港”「宇宙エレベーター」 大林組が語る2050年の未来
THE PAGE
月を超えて火星、さらにはその先へ ── わたしたち人類は、一体、宇宙のどこまで行けるのだろう。宇宙空間に探査機などの宇宙船を送る“港”となる静止軌道上の「宇宙エレベーター」は、2050年の運用開始も可能という。開発に取り組む大林組の宇宙エレベーター要素技術実証研究開発チームの石川洋二幹事に話を聞いた。
ケーブルの長さは約9万6000km
一言で表現すれば、宇宙エレベーターは、“未来の宇宙輸送・交通システム”であり、ロケットに代わる存在になれる可能性があります。 ケーブルの長さは約9万6000km、地球から月までの距離の約1/4に相当します。静止軌道上のターミナル駅までは約3万6000kmですが、それだけでは重力によって地球に落下してしまうため、地球とは反対側にもケーブルを伸ばしてバランスをとります。このケーブルをクライマーが昇り降りして、人や物を運ぶのです。われわれの構想では、2本のケーブルを使用します。 最大のキモは、ロケットの代わりに宇宙空間へ探査機や有人宇宙船を飛ばせる点です。宇宙船の打ち上げにロケットを使用するのは、地球の重力圏から脱出できるだけの速度を得るためですが、対して、宇宙エレベーターでは、ターミナル駅やケーブルが静止衛星と同じように地球を回っていますので、ケーブルの高いところに宇宙船を運び、放出すれば、ハンマー投げのハンマーのように地球の重力圏を飛び出せる速度が得られるのです。
ロケットを使って打ち上げるよりも、宇宙エレベーターの方が2ケタくらいコストが安くなるという試算結果もあります。今後の技術開発の中で改めて確認が必要ですが、ロケットよりも低コスト化が図れれば大きなメリットとなります。宇宙開発のネックは、宇宙に出る際のコストが高くつく点にありますから。 他にも、地上と宇宙のあいだで人や物を運びやすくなりますので、地球外で採掘した資源の輸送や、宇宙太陽光発電所の建設に必要な資材の運搬などへの活用も期待できます。