北口榛花 メン・オブ・ザ・イヤー・ベストアスリート賞 ──パリで勝利の鐘を鳴らしたスマイル女王
指導を仰ぐために徒手空拳でチェコへ渡り、語学を習得しながらやり投げの練習に励む──。オリンピックのフィールド種目で日本人女子初となる金メダルをつかんだスマイル女王の歩んだ道。 【写真を見る】北口榛花の脚線美!
北口榛花、スマイル女王がクールに変身!
12月5日に国際文化会館で開催された「GQ MEN OF THE YEAR 2024」の授賞記者会見に参加した北口榛花(陸上女子やり投げ日本代表)は、「スポーツ選手の1人として受賞できてうれしい。素敵なお洋服も着られて、素敵なメイクもしていただき、人生でなかなかしてこれなかったことを1度に体験できてすごく幸せです」とコメントした。 「受賞パーティは、いつもとは違う雰囲気の衣装でのぞみたい」という北口榛花の意向を受けて、『GQ JAPAN』はスタイリストの三宅陽子とオリジナルドレスを作成。「HAENGNAE(ヘンネ)」のデザイナーで、NY、日本、イギリスでファッションを学んできた「ANNA CHOI(アンナ・チョイ)」に制作を依頼した。 シックなブラックドレスに合わせたヌーディーメイクがいつもと違う印象。ヘアメイクを担当した伊藤礼子によると、メイクのテーマはフレッシュでヘルシーなヌーディートーン。ベージュやブラウン系のアイシャドウでフレッシュさは活かしながら、シルバーのグリッターでクールな輝きもプラス。目もとはアイラインをしっかり引き、部分的なつけまつ毛で目力を強調した。低めの位置でスッキリとまとめたヘアはエクステでアレンジ。クールな強さを表現した。
やり投げ女王と笑顔の理由
東京の街中で行われた撮影中に、交通標識の支柱の横に立った北口榛花は、「こういう細長いものを見ると、つい投げそうになっちゃうんですよね」と言ってスタッフを笑わせた。彼女の朗らかなキャラクターのおかげで、撮影現場は小春日和の陽だまりのように、ふんわりとした温かい空気に包まれた。 「こんなふうに衣装を用意していただく撮影は初めて」という北口にこの日の衣装について訊くと、「黒のセットアップは、自分だったら選ばないタイプなので新鮮でしたね。黒いワンピースもすごくきれい。ハイヒールは、歩くときに捻挫をしないように気を使いました。メイクや衣装の新しい発見があったり、知らなかった自分の一面が見つかるのは楽しいですね」 この夏、パリ五輪の陸上女子やり投げで、北口が金メダルを獲得したのはご存じのとおり。もちろん、これだけでも偉業であるけれど、その5週間後の9月に行われたダイヤモンドリーグ・ファイナルの最終6投目がすばらしかった。66.13mのシーズンベストの投てきで、見事な逆転優勝。パリでの栄冠にも気を緩めず、さらなる高みを目指しているのだろう。 「パリの後で腰痛が出ちゃって、3週間ぐらいお休みをしたんです。ファイナルはシーズンの最後なのでどうしても出たかった。ただ、勝てるとかこんなに投げられるとは思ってもいなかったので、自分もびっくりの最終戦でした」 充実したシーズンを終えたいま、改めてパリ五輪を振り返ってもらおう。まず、無観客だった東京五輪と、スタッド・ド・フランスにたくさんの観客が集まったパリ五輪との雰囲気の違いについて尋ねる。 「たとえばフィールド競技だと手拍子をお願いすることがあるんですけれど、8万人の手拍子と、関係者だけの40人の手拍子だと、圧が全然違います。やっぱり、たくさんのお客さんの前で投げるほうが楽しいですね」 “6投目の北口”と呼ばれるように、大きな大会では最終投てきで結果を出すことが多かった。それがパリ五輪では1投目がベストで、逃げ切る形となった。これには理由があったという。 「2投目で足が攣ってしまったんです。1投目でよくなかった点に2投目では注意して、2投目で駄目だったところを3投目で直して、というようにどんどん修正していくのが私の6投の作り方なんです。だから、足さえ攣らなければ、パリではもうちょっと記録が伸びたかもしれません」 パリ五輪では競技場でのおおらかな笑顔が印象的だった。リラックスしたり平常心を保つために、あえて笑顔でいるのだろうか。それとも、自然と笑顔が出てくるものなのだろうか。 「自然に笑っていますね(笑)。いろんな選手がいて、いつもと変わらない人もいれば、さすがにオリンピックはいつもと違ってピリッとしている人もいました。私の場合は、オリンピックだからといってピリピリしていたら余計なところに力が入ってしまう気がしたので、いつもと同じようにしていました」 金メダルのごほうびは?という質問には、「まだなにも買っていないんです」と即答した。 「なにか心惹かれるものがあったらケチらずに買おうと思っているんですが、まだ出合っていませんね。そうそう、家族で旅行に行くことは決めています。ゆっくりと時間が流れるような海が見えるところで過ごすつもりです」 シーズン終了後には、地元北海道の旭川での凱旋パレードが行われた。母校への訪問といった活動も、「楽しんでいます」と振り返る。 「競技のときもファンのみなさんにサインを書いたりはするんですけれど、どうしても全員には対応できません。海外の競技場はファンサービスもしやすいんですけれど、日本の競技場は客席まで少し距離があったりして難しいんです。それもあって、今回はファンの方たちと触れ合うことができたのでよかった」